2010年04月10日

続・ツェルニーは何のため?

Category : 音楽的資料 

前記事に引き続きのツェルニーです。
前回読んだ「チェルニーってつまらないの?」は、音楽的につまらないと言われているツェルニー30番の魅力を紹介する本でしたが、今回読んだ「21世紀のチェルニー」は、もっとツェルニーの存在意義に迫る本。ピアノの上達のためにツェルニーは本当に必要なのか、必要だとすればどんな使い方をすればいいのか、全曲通して練習する必要があるのか、ツェルニーではない他のエチュードを使うという選択肢はどうなのか、といったことを国内外のピアニストやピアノ教師へのインタビューをもとに探っていきます。

日本でピアノを習えば避けて通ることのできないツェルニー。日本では「ツェルニー○○番程度」と言えばその人のレベルが分かるほど浸透してるし、現役のピアニストたちも、その多くがツェルニー経験者。名前が知られているような人たちは、進み具合も並じゃないんですね! 青柳いづみこさんは小学校4年生頃までに30番と40番を終わらせて、5年生からはクラーマー=ビューローへ。それを終了した後は、クレメンティ、ケスラー、モシュコフスキから抜粋して練習し、ショパンのエチュードへというコース。小山実稚恵さんは小学校3年生で30番、4年生で40番、5年生で50番を終了。50番の頃にクラマー=ビューロー、モシェレス、モシュコフスキも使い始め、小学校を卒業するころにショパンのエチュードへ。そして横山幸雄さんに至っては、全て初見でクリア!
でもアメリカでは、ジュリアード音楽院のピアノ専攻の生徒でもツェルニーもハノンもほとんど使ってないんだとか。バイエルやメトードローズに至っては名前すら知られていないようです。ヨーロッパでは、そこまで知名度が低いということはないようですが。ツェルニーも比較的使われています。でも全曲ではなく、ほとんどの場合が抜粋程度。
とはいえ、日本でも1990年頃からツェルニー離れが広がっているとのこと。教える側はほぼ100%がツェルニーを通過してきているにも関わらず、自分が習ってきたのと同じように生徒にもさせている教師はごく一部。エチュードの必要性は感じていても、習う側の現状に合わせて使ったり使わなかったり。今どきの子は何かと忙しくて練習時間もあまり取れないし、無理にやらせてピアノ嫌いになられても困るし、無茶な反復練習で手を故障されても、といったところですね。コンクールに出るような生徒はさすがにツェルニーを練習するようですが、それでも全曲を練習するというのは少なくなってきているようです。

テクニックの修得に関しては、日々の曲の中で必要なテクニックを練習するという考え方も優勢。でも国内のピアニストの中では、ツェルニーはやっぱり大事という意見も強いようですね。趣味の範囲のピアノだったとしても、上級の曲を弾けるようになりたければやっぱりある程度のエチュードは必要だし、コンクールの予選などで多くの人間が同じピアノを次々と弾くと、きちんとエチュードで訓練をしてきてるかどうかが一目瞭然なんだそう。
ツェルニーの大きなメリットは、譜読みが簡単で、偏りのないテクニックを身につけられること。1曲ごとにテクニックのある1面を強調して、その動きを反復練習、そして曲集全体で基本的なテクニックを網羅するシステム。ショパンにはショパンのテクニック、ベートーヴェンにはベートーヴェンのテクニックと、作曲家によって必要とされるテクニックが違うこともままあるけれど、ツェルニーにはそういう偏りがなく、あらゆるパターンのアプローチがあるので、練習しておくと後々楽になるとのこと。
でも、もちろんデメリットもあります。ツェルニーの練習曲は、あくまでのツェルニーの時代に弾かれていた曲のためのもの。バッハのような多声音楽、そしてロマン派から近現代の作曲家まではカバーしきれていません。左手の練習が少ない、黒鍵の多い調の練習が少ない、和音やオクターブの練習が少ない… 手の小さな日本人にとってオクターブや和音は負担の大きなテクニック。手を痛める原因の7割を占めているのだそうです。その原因となる曲は、ショパンのバラードやスケルツォ、リストの超絶技巧練習曲、グリーグのピアノ協奏曲、スクリャービンのソナタなどロマン派以降の作品。予防のためには、リストやショパンを弾きはじめる何年も前から和音やオクターブの練習を始めておきたいところですが、それにはツェルニーだけでは不足というわけです。

そういったことを理解した上でのツェルニーの上手な活用法についても書かれていました。まず1曲に時間をかけすぎないこと。これに関しては、ツェルニー自身もあまり長過ぎない方がいいと考えていたようですね。そして表示テンポも意識すること、不得意なテクニックや必要なテクニックを補うように使うこと、そして自分の耳できちんと聴いて音楽的に弾くようにすること。今何の練習をしているのか自覚することによって、上達にも大きな差が出るそうです。さらにツェルニー以外のエチュードの紹介と考察。各国の練習事情。

結局のところ、エチュードは必要だけどツェルニーに拘る必要はないし、ツェルニーをやるにしても完璧に仕上げる必要はないという考え方が優勢といったところでしょうか。
でも何らかのエチュードが必要なのであれば、私もツェルニー30番をしばらく頑張ってみようと思います。(本は持ってるんだし) 目標はインテンポ・ノーミスで弾けること! 本に表示テンポで弾くとリストに通じる華麗さが味わえて楽しいというのも書かれてましたが、確かにエッシェンバッハの弾く30番と40番のCDを試聴してみると、なかなか綺麗な曲集になっていてちょっとびっくりします。ある程度の速さで弾くとまた違う表情が見えてくるのはショパンのエチュードの10-4で経験済みですが、ツェルニーもそうだったのかー。今のところの目標としては、30番と40番をやってクラマー=ビューローかモシュコフスキへ! 頑張るぞー。おー。(さて、いつまで続くのでしょうか)
でもね、ツェルニーを練習をするとどんないいことがあるのか、子供の頃に教えてもらいたかったです。それか、その時に弾いてた曲に合わせた練習曲を抜粋してもらうか。それならもっと頑張れてたと思う! なあんて、何も考えてなかったのは自分だというのをすっかり棚に上げた発言ですが~。

とても面白くて勉強になる本でした。特に面白かったのは、かつて日本人をこれほどまでにツェルニーに駆り立てることになった要因の1つに、日本の伝統芸能によくある「型」を叩きこむ感覚と似たものがあったのではないかという話。ああ、なるほど。そういうのもあったかもしれないですねー。

*関連記事*
ツェルニーは何のため?
続々・ツェルニーは何のため?

Comments (2)

  1. 私もチェルニーをやっていないので気になるところです。
    それぞれ何のための練習曲なのかっていうのが教わって
    理解しながらやれば効果がありそうですよね。
    あんまり覚えてないけど子供の頃ってそいういう話って
    されていない気がします。
    やっぱり子供の時は理解より慣れが優先されるんでしょうか?

    バイエルが基本だと思っていましたけど
    各国のピアノ教本ってさまざまなんですね。
    国別ピアノ教本一覧みたいのがあれば見てみたいです。

    「演奏と指導のハンドブック」を図書館で借りれました。
    パラっと見たらこれも「バッハ~」みたく何度も読むであろうと思い
    古本屋で探して注文しちゃいました。
    紹介してくれてありがとうございます♪

  2. アリア

    やっぱり目的意識を持つのは大切ですよね。
    今の先生なら、色々説明してくれるけど
    子供の頃の先生は、そういうこと何も教えてくれなかったし…
    でもその当時は、多分それがごく普通だったはず。

    うーん、説明しても子供が理解できるかどうかというのもあるでしょうけど…
    それよりも、その当時の先生のあり方がそうだったんじゃないですかね?
    今よりももっと、何ていうか、権威的というか…
    生徒は無条件に従うもの、と考えてたというか。黙ってついて来い?(笑)
    ピアノとは全然違うけど、たとえば今どきのお医者さんなんかでも
    今と昔とでは全然違いますよね。(と実感するのは歯医者さんなんですが)
    インフォームド・コンセントという概念が定着してきてるし。
    それと似たような感じかな~ なんて思ったりします。

    各国のピアノレッスン事情も面白かったですよ。
    ほんとほんと、国別ピアノ教本一覧はぜひ見てみたいです!
    (文章的にはかなり書かれてたけど、視覚的に見てみたい~)

    「演奏と指導のハンドブック」、注文しちゃいましたか♪
    うんうん、あの本もいいですよね。
    お役に立てたようで嬉しいです。^^

Copyright© 2008-2012 Aria, all rights reserved * Powerd by WordPress