2010年07月09日

バッハの読譜

Category : 音楽的資料 


バッハの楽譜を読むためにいい本ないかなーと探してたんですけど、見つけちゃいました!
大島富士子さんの「正しい楽譜の読み方」です。副題は「バッハからシューベルトまで ~ウィーン音楽大学インゴマー・ライナー教授の講義ノート」。その副題の通り、ウィーン音楽大学のライナー教授の講座「歴史的演奏法」を基に、大島富士子さんが書きあげたもの。月刊誌「現代ギター」に11回にわたって連載され、それが1冊の本にまとめられたのだそうです。著者の大島富士子さんは、声楽家でありながら通訳・翻訳もこなし(オーストリア国家公認日本語法廷通訳者・翻訳者としての資格を所持!)、ライナー教授の講演の通訳者として、あるいは演奏会の共演者として、ウィーンや日本で活動を続けているのだとか。

この本、全部で85ページしかない薄い本なんですけど、内容がとても濃くてびっくりしてしまいます。まだ全部は読んでないんですけど(あらら)、第3章の「テンポについて」4章「テンポの決め方」のところでもう既に目からウロコが落ちまくり。18世紀の「テンポ・オルディナーリ(通常テンポ)」という概念からして、全然知らなかったし! この「通常テンポ」とは、健康な大人の脈拍(1分間に60~80)や歩く速さを基本に曲のテンポを決めるというもの。曲のテンポを決めるのに脈拍や歩く速さを使うというだけならどこかで聞いた(読んだ)ことがあるし、メトロノームが発明される前の時代ということで容易に納得できるんですが、それだけじゃありません。そこから「通常テンポ」が定められるんです。基本的に、脈拍1回分が1小節の長さになるんですね。そして曲の拍子が変わっても、1小節の時間的な長さは変化しないんです。例えば4分の4拍子なら、1つの脈の間に四分音符が4回。4分の3拍子なら、1つの脈の間に4分音符が3つ。これが基本。

もちろん例外もあります。
 1.曲の中に16分音符や32分音符が多い場合
  (一番細かい音符が連なってる部分が、容易に、しかも美しく弾けるテンポとなる)
 2.1とは逆に細かい音符が全くなく、2分音符や全音符ばかりの場合は速め
 3.変化記号が多い複雑な調性の曲は、単純な調性の曲(一番単純なのはハ長調)よりも遅め
 4.長調は速め、短調は遅め
 5.複雑な音程や音程の離れた跳躍がある場合は遅め。跳躍なしにスムーズに上下行する時は速め
 6.不協和音が多い曲は遅め
 7.作曲家の指示している演奏表情用語やテンポ用語などに従う
 8.舞曲の場合は、その舞曲の本来の性格からテンポを決める

この場合の「速め」や「遅め」は、全て「通常テンポ」が基本となります。この時代、純粋に速度だけを表していたのは「lent」「presto」の2つだけだったんですって。(もちろんそれも「通常テンポ」が基本となる) あと、例外にも入れましたが、バロックの時代の音楽は80%が舞曲だったので、舞曲かどうか判断するのがとても重要。舞曲に関しては、たとえ実際には踊らない、器楽作品として独立した作品になっても、「通常テンポ」のきまりからは除外されるのだそうです。

まだ半分も読んでないのに、こんなに勉強になる本だったなんて! 図書館には置いてなくて、「現代ギター」に連載…?と頭の中にはてなマークが飛び交いつつ買っちゃったんですが、これは正解でしたー。「現代ギター」って、クラシックギターの専門誌だったんですね。(ギターと聞くと、まずエレキギターを想像してしまう私) 買って良かったです!

ちなみに全部で11章。

 第1章 楽譜の基本
 第2章 楽譜の比較
 第3章 テンポについて
 第4章 テンポの決め方
 第5章 舞曲について
 第6章 舞曲の種類
 第7章 装飾音符について
 第8章 装飾音符の種類
 第9章 アーティキュレーションについて
 第10章 楽譜の選び方、見方について
 第11章 誤解されやすい用語や記号について

巻末には、参考文献だけでなく、大島富士子さんが選んだ推薦図書も載ってます。さらには索引も。こんな薄い本だし、章の分け方が分かりやすいのでとりあえずは必要なさそうですが、やっぱり索引はあると便利かもしれないですね。続きを読むのも楽しみ~♪

Comments (4)

  1. yoshimi

    アリアさん、こんにちは。

    これは良い本を見つけましたね~。こういう話は音大とかへ行けば教えてくれるのかも知れませんが、私は楽典類やら理論は全然勉強していないので、市販の本を読んで知識を仕入れるというパターンです。
    シューベルトまで…ということはベートーヴェンの曲にも応用できるのでしょうか?

    ベートーヴェンなら「ピアノ・ソナタ演奏法と解釈」というバドゥーラ=スコダの本があって、ブレンデルが推薦していたので、ちょっと読んでみようかしらん…なんて考えていたところです。
    今は、バッハよりもベートーヴェンのソナタの方が弾いている曲が多いので、頭のなかはベートーヴェン・モードに切り替わっているのです。

    メトロノームの速度指定はベートーヴェンが初めて指定したそうですが、その指定どおりに弾くと、これは絶対おかしいということも多々あるようで、どうも初期のメトロノームの仕組み自体に問題があったようですね。

    ストラヴィンスキーは厳密に速度を指定していて、指揮者もそれが無理なテンポだろうか何だろうが、必死の努力で守っていたんですが、実はミスプリントか何かで、実際は全然違う速度で演奏するべきことが発覚したとか..。
    まあ、テンポに関しては、面白いエピソードがいろいろあります。

  2. アリア

    yoshimiさん、こんにちは。
    ほんといい本を見つけてしまいましたよー。
    嬉しくて、読んでる途中なのに記事をアップしてしまったぐらい。(笑)
    で、結局まだ舞曲のところまでしか読んでないんですけど(遅い…)
    当時の貴族たちの舞踏会の実態が説明されていて、ここもとても面白いです。
    でも「シューベルトまで」という副題はどうなんでしょう…
    これからまた変わるのかもしれませんが、今のところは完全にバロック中心ですね。
    時代的にはベートーヴェンにも十分かぶってるし
    ベートーヴェン自身、バロックの伝統をそのまま受け継いでる部分があるでしょうけど
    むしろ時代の変わり目の作曲家として登場してるような印象です。
    「通常テンポ」から離れていった最初の作曲家がベートーヴェンだったそうですし~。
    (あ、こういう時のために索引があるのか! と早速使ってみました!
     ベートーヴェンに関してはやっぱり上に書いたような感じみたいです)

    なのでやっぱり、ベートーヴェンにはバドゥーラ=スコダの本の方がいいかもです。
    ソナタに特化してる本なら尚更、この本よりももっと直接参考になりそうですし。
    いずれバッハに戻ってきた時に改めてこの本を読むのは、とってもオススメですが~♪
    ほんとこういう話って普段なかなか聞くことができないですものね。
    そのためだけにでも音大に行きたくなっちゃいます、私。(聴講だけでも!)

    メトロノームには色んなエピソードがありますね。
    私もベートーヴェン関係のをいくつか読んだことがあります。
    出版社用のメモをなくして速度を決め直したら、前のメモが出てきて
    それがまた全然違う数字だったとか…
    そうか、メトロノームの仕組み自体にも問題があったんですねー。
    あ、ストラヴィンスキーのエピソードは初耳です。
    必死で頑張ってた指揮者と楽団員たちが、気の毒ながらも笑えますね。(^O^)

  3. おお~アリアさん、これ気になってたんですよー
    私も、「現代ギター」に連載…?
    だったのですが、レビューしていただいてよかったです♪
    早速購入してみます。

  4. のんさんも気になってましたか。
    うんうん、やっぱり「現代ギター」ですよね。(笑)
    でもこれは絶対に「買い」!
    バッハが好きな人は、持ってて損はないと思います~♪

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