2010年08月28日

佐渡裕さんの本

Category : 音楽的資料 

 

「僕はいかにして指揮者になったのか」は、先日「佐渡裕ヤング・ピープルズ・コンサートVol.12」に行ったことを記事にした時に、yoshimiさんに教えて頂いた本。この本では佐渡裕さんの半生、京都に生まれ育ち、いつしかクラシックが大好きになり、京都市立芸大のフルート科へ。そしてどんな経緯で指揮者への道を歩むようになったのか、さらには小澤征爾さんやレナード・バーンスタインとの出会いは… といったことが語られていきます。いやあ、面白かったです。先日のコンサートでもすごくエネルギッシュでカッコ良くてびっくりだったんだけど、これを読んだらますますファンになってしまう~~。

全編から佐渡裕さんが音楽が本当に大好きなことがびしびし伝わってくるし、色々と印象的なエピソードがあったんですが、一番印象に残ったのはやっぱりブザンソンでのコンクールでしょうか。小澤征爾さんも優勝した、フランスのブザンソンの指揮者コンクール。小澤征爾さんの「ボクの音楽武者修行」でのブザンソンの場面もとても面白かったんですよねえ。「僕はいかにして指揮者になったのか」でも、やっぱり面白かったです。コンクールの課題そのものの話も面白かったし、コンクールに参加することによって徐々に変化していく佐渡裕さんの気持ちの部分も面白かった。課題の間違い探しでは、小澤征爾さんは正攻法で全問正解だったと思いますが、佐渡裕さんは間違いを指摘しながらもオケを味方につけてしまうところがスゴイ。
あとは、大学2年の時に出会った「朽木さん」の話。音楽関係でも何でもない、ただの普通のおじさんに見える朽木さんに、佐渡さんは初対面で「君は指揮者か?」と聞かれたというんですね。その頃の佐渡さんはフルート科の学生。なぜ指揮者かという言葉が出たのかといえば、それは佐渡さんの後ろにいる「指導霊」が指揮者姿だったから。指導霊とは、努力したら努力しただけ、その人間に示唆を与えようとしてくれる存在で、この指導霊に恵まれていたら努力しただけ成長し、向上すればレベルの高い霊に変わっていくのだそうです。(反対に怠けている人間は無視されるのだそう) 私自身はそういう方面を全面的に信じる方ではないんですけど… ほっほう、そうか、頑張れば頑張るほどいずれは報われるのか、とそっちの思考でなんだか前向き度が増してみたり。(笑)
登場するほかの指揮者としては、レナード・バーンスタイン、世界のオザワ、そして岩城宏之さん。彼らと出会い学ぶことによって、佐渡裕さんがどんどん大きくなっていくのが分かります。(もちろん人間的成長のきっかけとなるのは指揮者との交流だけではないんだけど) 指揮者の才能というのは私にはよく分からない部分ですが、それでも佐渡裕さんの人間的な魅力は十分分かるし、巡ってきたチャンスを確実に自分の方に引き寄せる力も半端じゃないですね。
地の文章は標準語なんですけど、佐渡裕さんの言葉は京都弁。これがまたいい味を出してるんですよー。バーンスタインとの会話まで京都弁なんですもん! 「ライフ・キャン・ビ・ビューティフルや!」…いいなあ。
とってもパワーをもらえる本なので、この本、欲しい!と思ったんですけど、今は入手不可状態。中古で探すか… と思っていたら、新潮文庫から復刊したところみたい。(最初見た時は9月に刊行予定になってたんだけど、もう買えるようです) なんてナイスタイミング!

それにしても、佐渡裕さんが指揮科出身じゃないのにいきなり世界的な指揮者の弟子になったことこととか、指揮者コンクールの時の話とか… 特にオーボエとクラリネットが入れ替わるエピソード。「ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」が課題曲。そしてデビューはベートーヴェンの交響曲第7番。プライヴェートジェットで移動するバーンスタインの後を夜行列車などで追いかける辺りも? 「のだめ」の千秋に重なる部分が結構あるような。(他の本を読んでいてもそう思ったことは何度かあったので、作者の二ノ宮知子さんは相当勉強してらっしゃるんだろうと思いますが)

指揮者の書いた本といえば、さっきちらっと触れた小澤征爾さんの「ボクの音楽武者修行」も面白かったし… 日記や手紙が中心なので淡々と書かれているんですが、着々と出していく結果がものすごくてびっくりなんですよね。才能に溢れてる人って素晴らしいです。あと岩城宏之さんの本も面白くて「指揮のおけいこ」「オーケストラの職人たち」「音の影」「フィルハーモニーの風景」「岩城音楽教室」…と何冊も読みました。指揮者本、面白いです。時には100人以上になる個性的な集団を棒1本でまとめ上げる人たちだけあって、やっぱりすごく頭がいいし、人間的にも魅力的なんですね。こういうのを読んでると、もう少しオーケストラにも目を向けたいなという気になります。(今はどうしてもピアノ独奏が興味の中心だから)

「感じて動く」の方は、スポーツドクターの辻秀一さんという方が聞き手となって佐渡裕さんの話が引き出されていく本。2人とも1961年生まれ、辻秀一さんのお母様の実家が京都の太秦で、これは佐渡裕さんの生まれ育った土地。2人とも自分でプレイする人間ではなく、チームの能力を最大限に引き出して観客に感動を創出するのが仕事。それ以外にも様々な共通項があり、さらに初めて出会った時に話したことに対する共感が大きくて、本を書くというところに至ったのだそう。
こちらは佐渡裕さんの音楽の話ももちろん色々とあるし、興味深い話もあるのだけど… まず辻秀一さんが話を振って、それに対して佐渡裕さんの話があり、そして辻秀一さんの解説のような文章があるという構成。辻秀一さんはスポーツドクターという肩書ではあるけど、もっとビジネス寄りの方なんでしょうね。音楽書というよりもむしろビジネス書のような印象でした。ビジネスマンではない私としては(同じ自己啓発するにしても、方向性が違うんだもの)、音楽の部分だけ読みたかったな。「僕はいかにして指揮者になったか」の柔らかい京都弁がなくなってしまっていたのも残念でした。

Comments (2)

  1. yoshimi

    アリアさん、こんにちは。

    早速、読まれましたね~。いつもながら本を読むのはとっても速いですね。
    自伝を読むと、小澤さんも佐渡さんも、元々バイタリティがあって、楽天的で自分自身を信じている人なんだと思います。
    悲観主義の人は物事のマイナス面に捕われますが、オプティミスティックな人は自信もあるしプラス面を見るので、何事も”成せば成る”のかなと。

    コンクールの話はやっぱり面白いですね。この本のなかでは好きなエピソードがたくさん入ってます。
    小澤さんや佐渡さんの本を読むと、指揮者の人は、耳も頭も両方良くないといけないなあと思いますよね。
    楽器奏者がそうではないというわけでありませんが、あの膨大なスコアを解析して、個々の楽器の音を識別しながら、的確に指示を出していかないといけないというのは、楽器の世界とは違うものを感じます。
    あと、国籍もキャリアも違う自負心の強い(ベテランも多い)メンバーをまとめていくには、おっしゃるように人間的な魅力が必要なので、道理で指揮者の伝記が多いわけです。

    指揮者の伝記や自伝は、カラヤン(これは”ビジネスマン”としてのネガティブな面の評伝)、ベーム、チェリビダッケ(シニカルなトーンの評伝でこれは面白い方)、ショルティのを読みましたが、それぞれの個性や時代背景が違っていて、歴史物としても面白く読めます。
    でも、小澤さんや佐渡さんの自伝のように共感しながら読める…というわけではないのですが。

    カルショーの『レコードはまっすぐに』も有名な本ですが、これにもいろんな有名な指揮者が登場するし、当時の欧米の音楽業界事情も書かれていて、内幕物的なところのある面白い本です。私は歴史が好きなので、これも歴史物ですね。
    特に印象に残ったのは、作曲者で指揮も上手かったブリテン。おかげでブリテンの曲をいろいろ聴くきっかけになりました。

  2. アリア

    yoshimiさん、こんにちは。
    えへへ、早速読んでしまいました。面白かったです~。
    そうですね、面白い本を読む時はかなり速いです!
    数少ない貴重な特技の1つかもしれません。(笑)

    楽天的で自分を信じる、というのはとても大切なことなんでしょうね。
    指揮者にとってはもちろんのこと、それ以外の人にとっても。
    いつも悲観的な人のところに、運が沢山巡ってくるとはあまり思えないですもん。
    私自身の周りを見ても、運が強いと思う人たちは揃って楽天的です。
    楽天家で、尚且つ自分の運の強さを信じてるから、また強いような気がするんですよね。
    とは言っても、名声が響き渡るような人はいないんですが~。(笑)

    本を読むと、指揮者と奏者は音楽好きの部分では共通していても
    実際に必要な能力はまた全然違うんだなって実感させられますね。
    プロの楽器の奏者になるにも、確かな才能が必要となってくるわけですけど
    指揮者となると、また違う意味で「選ばれた人間」である必要があるのかも。
    一般的に社会で必要とされる能力とは相当違うから
    逆にあまり社会に順応できない人だったり?(天才に変わり者が多い原理で)
    なんて思ってしまったりもするんですけど
    それじゃあ海千山千の団員をまとめられないわけだし…
    一体どんな人たちなんだか、実際にちょっとしゃべってみたいぐらいです。(笑)

    考えてみれば、私が読んだ指揮者本って日本人指揮者ばかりなんですよね。
    カラヤンもベームもチェリビダッケもショルティ読んでないです。
    色々探してみなくちゃ!
    あ、でも私も歴史物は好きな方なんですけど、ナチ関連が多そうですね…
    その辺りはちょっと苦手かもしれません。(汗)
    とりあえず「レコードはまっすぐに」を借りて来ようと思います。
    色々教えて下さってありがとうございます♪

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