2010年11月09日

アラベスクの情景

Category : 音楽的徒然 

日頃ドビュッシーの「子供の領分」を練習する時、時間と気持ちに余裕があればアラベスクの1番と2番も弾くようにしています。理由は単純、同じ本に入ってるから。私は安川加寿子さん校註の楽譜を使ってるんですが、「ドビュッシーピアノ曲集」の第1巻は「子供の領分」と「アラベスク」2曲なのです。
アラベスクは2曲とも中学の頃のレッスンでやったことがあるので、その復習でもあるんですが、これがなかなか綺麗に弾けないんですよねえ。1番の方は友達が好きで何度も弾いてあげてたので、かなり覚えてたんですが、指が滑りやすい… ドビュッシーの曲ってどうしてこう滑りやすいのかな。最近ほとんど分からない程度になってきたんですが、まだまだ油断大敵。そして2番。私自身は中学の頃1番よりも2番の方が好きだったんですが、2番は本当にレッスンの間しか弾かなかったので、あっという間に弾けなくなってしまい… 今もまだまだぎこちないです。(悲)

アラベスク(arabesque)といえば、「アラビアの」「アラビア風の」という意味のフランス語。そしてもっと一般的には、アラビア風の装飾文様のことですね。イスラム教において偶像崇拝が禁止されていたことから、具象的な模様を描くことも禁止され、そのためにあのような抽象的な模様が生み出されて盛んに使われるようになったのだそう。(キリスト教だって同じように偶像崇拝禁止のはずなのにねえ)
模様には、大別して幾何学文様、植物文様、組み紐文様、文字文様があるようなのですが、やっぱり一番印象に残るのは植物を元にした文様でしょうか。例えばこんなの。そもそも「アラベスク」の日本語訳だって「唐草模様」ですものね。

 

ドビュッシーの「アラベスク」という曲に対して、中学の頃の私は多分、あの装飾的なメロディに由来する題名だと理解してたと思うんです。そして無意識にでもイメージしていたのは、やっぱり植物文様だったんじゃないかと…。当時はあんまりそういうのは考えてなくて、ただ音符通り弾いてただけだと思うんですけどね。でも例えば葡萄を図案化したものなんかは小さい頃から大好きだったので、多分その辺りのイメージに繋がっていたのではないかと思います。

でもね、先日アラベスクの1番を練習していて、はたと気づきました。これって植物じゃないじゃん! そうそう、違う! 植物というより、むしろ水。この曲のイメージって水じゃないですか? 右手はともかくとして、左手はずっと水だと思うんです。水の中の深いところから水面まで深さは色々だけど、とにかく水、水、水。右手は左手をうけて水になることもあるし… でも風になったり光になったり、影をさしかけてみたり。

冒頭の有名なメロディ。あの2小節は水だと思うんですね。右手も左手もゆらゆらと煌めく水。この時の水面はとても滑らか。続く3小節もまだ水。水面はまだ静かですが、最初の2小節に比べるともう少し動きがあって… その動きの余韻を感じたりします。そして左手の八分音符2つごとに右手が三連符はいるところは風。爽やかな風がさあっと吹いてきて水面が乱されるんです。右手が三連符になるところは基本的に全部風のような気がしますね。風は少しずつ強くなって、それと共に少しずつクレッシェンド。そして少しゆっくりになり、17小節目で冒頭と同じメロディに戻って、元の静かな水面に戻ります。ここの右手の「ラーソーファーミー」は水面に差し込む光かなあ。その後も木漏れ日がちらちらして、時々木の葉が水面に落ちて水紋が広がってみたり…? そして26小節目、元のテンポに戻るところではすこし影がさすんです。その影の下で、水は深いところから揺り動かされて水面にはさざ波が… そんなこんなで、第1部終了。
39小節目からの第2部では… うーん、ここは何でしょうね。ここのイメージがまだちゃんと確立してないんですが(私が一番好きなのはこの部分なのに!) 少し曲調が暗くなって、本格的に影が差してる感じがします。太陽がかげったのでしょう。そうなると吹いてくる風もどことなく冷たく感じられるもので。でも47小節目辺り、まだまだもやっとした中にまたほんの少しずつ光がさしはじめます。…でも、63小節目から70小節目までの転調する辺り、ここはよく分からないんですよね。ここは何なんだろう?
そして71小節目で第3部に入り、また元の情景へと戻ります。空も明るくなり、風もそよやか。第1部の何もなかった時と完全に一緒ってわけにはいかないんですけどね。そして最後は水紋が広がりつつ曲が終わります。

色々想像してた割に実際に文字にしてみるとまだまだ穴だらけでしたが(汗)、こんな感じでしょうか。穴があいてる部分とか、何かいいイメージがありますかね? あ、もちろん「水」以外でも、コレというイメージをお持ちの方がいらしたら、ぜひ教えてくださーい。
この「水」のイメージ、弾きながら色々考えていた時は小さな泉のようなイメージだったんですが、流れていく川でもいいかもしれないですね。というか、そっちの方がイメージに合うかしら? いずれにせよ、そんなことをイメージしながら弾いてると、今までの表現方法とはまた色々と変わってくるような気がします。もっともそのイメージが実際に出す音に結びついてるかどうかはまた別問題なんですが。(あらら)

同じアラベスクでも、2番の方はオーケストラですよね。というのは私が自分で気がついたのではなくて、青柳いづみこさんの「指先から感じるドビュッシー」にあってなるほどと納得したのですが。そう思って弾いてると、とっても楽しい!(元々好きな曲なので尚更ですね)

あとね、「子供の領分」の「象の子守歌」は、弾くたびに「ぐるんぱのようちえん」の絵が頭に浮かぶんです。私が曲の中に感じるストーリーはまたちょっと違うので、「ぐるんぱ」は絵だけなんですけどね。気が向いたら、そちらもいずれ記事にするかも。

堀内誠一さんのあったかい絵が大好き。子供の頃の本、まだ持ってます→

Comments (2)

  1. ペンネ

    アリアさん、こんばんは〜♪

    私も「アラベスク第1番」は、”水”の動く様や、水に当たる光を表していると
    ずっと思い込んでいました。
    勝手な印象でしかないのですけれど。
    水の曲と言えば、「水の反映」とか、他の作曲家でも「エステ荘の噴水」「泉のほとりで」
    「水の戯れ」「オンディーヌ」などありますけれど、
    「水の反映」よりも「水の戯れ」っぽい印象です、私のは。
    (「水の反映」は水の動きを客観的に見て表したもので、
     「水の戯れ」は、自分が水になってしまった主観的なもの、と
     私は教えられたんですが。)

    そうそう、「象の子守唄」は、「象」の実物の?
    子供が感じる象のイメージとちょっと違うんですよね。
    そんなにどしんどしんした感じじゃない。まぁ、子守唄だからでしょうけれど。
    子供を寝かしつける時に読んであげる絵本のお話、っていう感じがします。

  2. アリア

    ペンネさん、こんにちは~。

    わあ、ペンネさんも水や光と思ってらっしゃったんですね。
    ということは、これが正解という可能性がぐーんと高くなりますね!
    先日ふと気がついてからは、弾けば弾くほど「水」だという考えが強くなります。
    考えてみたら、タイトルは唐草模様からきたんだろうと思いつつ
    曲そのものに関しては、なんだかピンと来ないままだったんですよねえ。
    正解かどうかはともかく、これでやっとすっきりした気分で弾けます。(嬉)

    水の曲、色々ありますね。揃いも揃って難易度が高そうな曲ばかり!
    曲そのものも難しそうだし、きらきらした水らしい音を出すのも大変そう…
    水ってその瞬間、瞬間でどんどん表情を変えていきますものね。
    さまざまな音色をその瞬間によって弾き分ける必要があるんでしょうね。
    あ、「水の反映」と「水の戯れ」がそういう違いとは気がつきませんでしたが
    言われてみるとまさにその通りという感じがしますね。
    「水の戯れ」は、ほんと水そのものって感じですものね。
    そしてそうですね、「アラベスク」の第1番もそれに近いですね!

    水って昔からすごく気になる存在なんです。
    私、子供の頃から本を読むのが大好きなんですけど、
    一時、水にはまって、水が印象的に使われてる伝承系作品を探して読んでたぐらい。
    ブルターニュの沈んだ町イスの伝説とか(沈める寺ですね♪)
    ウンディーネとかオンディーヌとか…(結局のところ一緒なんですけど)
    たとえば「ペレアスとメリザンド」の水なんかもとても印象的でした。
    伝承やおとぎ話では、水は異界への転換点なんですよね。
    ものすごく意味深長でミステリアスな印象があります。
    「アラベスク」は、あまりミステリアスな感じではないけれど。(笑)

    「象の子守歌」の象は、私のイメージではぬいぐるみです。
    夜、ベッドの中で女の子が仲良しの象のぬいぐるみにいろんなお話をしてあげてて
    そのまんま夢と現実の境目がなくなっちゃうような。
    お話は、そのぬいぐるみの象が主人公。象の王子様なんですよ。
    …ってどこかで聞いたような筋書きですね。(笑)

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