2011年05月30日

バロック・ダンス・ファンタジー

Category : 音楽的資料 

バッハの「フランス組曲」をやるにあたって一番気になっていたのは、この組曲が実際に踊るためのものではないにしろ、当時のダンスを全然知らないということ。現代でも踊られるワルツやタンゴ、クイックステップ、サンバやルンバといった社交ダンスの類は大学の時に授業で(!)習ったことがあるんですけど(注・全然踊れません。その当時だって全然ワケ分かんない状態だったし)、バロックダンスは全然知らないですからねえ。

檀さんに教えて頂いて映画「王は踊る」は観たんですよ。これは太陽王とも呼ばれたルイ14世と、王の宮廷楽長であり寵臣でもあったジャン=バティスト・リュリを描いた映画。ルイ14世の踊りがとても美しかったし(特に親政を始めたばかりでまだまだ少年のルイが、自らを太陽王として位置付けることになる最初の踊りが素晴らしい!)、リュリの音楽も素敵だったし、当時の風俗や雰囲気がよく分かったんですけど(映画としては、ちょっとピントがぼけた感じではあったんですけど)、この映画の中の踊りは基本的に1人ですしね。舞踏というよりクラシック・バレエという感じ。(おそらく当時はそういうものだったんでしょうし、それがまた良かったんですが) もっと宮廷舞踏をクローズアップしたものが見てみたかったんです。そんな時にネットのお友達に教えて頂いたのがこのDVD。

バロック時代ヨーロッパへの時空を超えた旅。
そこで出会うのはバロック・ダンスで綴ったヨーロッパ諸国の華麗なるダンス・ファンタジー。バロック・ダンスの研究家、振付師であるマリー=ジュヌヴィエーヴ・マッセが贈るバロック・ダンス・エンターテインメント!!

サブレ侯爵夫妻は彼らの城で宮廷舞踏会を催す特権を与えられていた。
侯爵夫妻は舞踏会の準備を念入りに行い、舞踏教師のレッスンを毎日受ける。そして舞踏会当日、廷臣や身分の高い招待客が、それぞれのステップの出来栄えを注視しあう中、次々とダンスが披露される。このようなフランス貴族社会の厳格なマナーのもとで催される舞踏会を始めとし、サブレ侯爵夫妻はイングランド、ドイツ、イタリアへダンスとともに旅をする。それらの国々で、その国を象徴する音楽、雰囲気の中で、華麗で躍動的なバロック・ダンスのステップが次々と繰り広げられる。

 ●フランス 《宮廷舞踏会 あることと見えること》
 18世紀、舞踊の巨匠ペクール、フイエによる振付
 音楽:カンプラ、マレ、デトゥーシュ、リュリのオペラ – バレエより抜粋

 ●イングランド 《愛と嫉妬、ドラマの行方》
 音楽:組曲「ダイオクリージャン」(1690)
 作曲:ヘンリー・パーセル(1659-1695)
 振付:マリー=ジュヌヴィエーヴ・マッセ

 ●ドイツ 《古城の夜、ノスタルジー》 
 音楽:2つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調(1682)
 作曲:ヨハン・ローゼンミュラー(1619-1684)
 振付:マリー=ジュヌヴィエーヴ・マッセ

 ●イタリア 《ヴェニスのカーニヴァル》
 音楽:リュートのための協奏曲ニ短調 RV 540、トリオ ト短調 RV 85
 作曲:アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)
 振付:マリー=ジュヌヴィエーヴ・マッセ

英・独・伊の場面は創作なんですが、仏の場面だけはリュリのオペラからの抜粋。当時のダンスは残念ながら踊り継がれることなく失われてしまっているようですが、幸いなことに史料は残されていて、当時の舞踏譜に即して原曲通りに踊られているとのこと。「フランス組曲」に入ってる舞曲で実際に観られるのは「クーラント」「サラバンド」「ガヴォット」の3つだけなんですけどね。(その他に観られるのは「パスピエ」とか「ミュゼット」とか)
それでも「走る」という意味のクーラントでも、それほど素早い動きがあったわけではなかったのねえとか(というか、全然走ってないじゃん!)、ゆったりとした曲調のサラバンドだけど意外と細かく動くんだなあとか(確かにゆったりしてる割に音数が多いんだよね)、発見があって面白かったです。ガヴォットは比較的イメージ通りでしたが。これは列になって踊る踊りだったのね。

あと少し驚いたのは、上のDVDの紹介文にも「廷臣や身分の高い招待客が、それぞれのステップの出来栄えを注視しあう中」とあるように、舞踏会が緊張感たっぷりのものだったということ。舞踏会の主催者であるサブレ侯爵夫妻も「舞踏会の準備を念入りに行い」というのは分かりますけど、「舞踏教師のレッスンを毎日受ける」ですからね。(実際に演じられるのは舞踏会当日の場面のみです) ルイ14世とおぼしき人物を含めて踊り手が6人登場するのですが、視線のやり取りがすごいです。物言いたげな視線が絡まり合い、どんどん空気が張り詰めていくのがよく分かります。宮廷舞踏というのは、自ら踊って楽しむものではなかったんですねえ。
でもフランス編最後を締めくくるミュゼットは、客が帰った後のサブレ侯爵夫妻による踊り。これはそれまでの舞踏会の場面ような緊張感たっぷりのものではなく、愛情と優しさに満ちた踊りでした。

 

左は「王は踊る」のDVD。私は日本語版を入手できなくて、日本語字幕の出ないフランス語版を観ました… 右はそのサウンドトラック。ここのカスタマーレビューにもあったんですが、リュリのCDってあまりないので、このサウンドトラックを聴くというのも手だなあと思いました。と思うほど、音楽も素敵でしたよ~。

Comments (5)

  1. みー

    アリアさん、こんにちは。
    いつも楽しく読ませて頂いています。またお邪魔致します。

    フランス組曲は私にはまだまだ先の話なんですが(苦笑)、
    「フランス組曲」→バロック舞踊って結びつきませんでした。またもや勉強になりました。ありがとうございます!「王は踊る」。こういう観方もあるんですねえ。ダラダラとしか見ていなかったので、フランス組曲な発想は全然ありませんでした。気合を入れて観直します(笑)&この監督は一作目から好きなので何だかうれしかったです。(一作目、ご覧になりました?)
    それから、ブルクミュラーのこと。(コメントっていつまで続けてよいかわからなくって…お返事が今になってしまいました。ごめんなさい)
    はい、25番です。私も「スティリアの女」好きです。それと「帰路」と「狩猟」は今でもかなりの頻度で弾きます。タイトル付って、子供の頃は、ハノンやバイエルやツェルニーやらの谷間のオアシスって感じでした(笑) 大人になって弾いてみると、かなりの要素一杯で、充実したおさらい期間でした。

  2. みー

    ごめんなさい。すみません、書き落としです(恥を忍んで)
    >映画としては、ちょっとピントがぼけた感じではあったんですけど
    その通りなんです。この監督。映画的には不完全燃焼なんですが、音楽愛好者としてはハナマル映画なんです(笑)

  3. アリア

    みーさん、こんにちは。ようこそです~。
    あ、コメントは好きなだけ続けて頂いていいんですよ~。
    すぐ終わっても構わないですし、どんどん続くのも大歓迎!
    お好きなようになさって下さいね。^^

    あ、そうなんです、フランス組曲は舞曲なんですよ。
    バッハなら、イギリス組曲やパルティータもそうです。
    実際踊るためというよりも、その形式を借りて作曲されたという感じですが。
    あ、みーさんも「王は踊る」お好きなんですね!
    ほんと、ピントは多少アレでしたが(笑)、音楽愛好者にはハナマル映画ですね!
    いや、フランス語で観てたせいで理解不足だったせいもあるのかなと思ったんですが
    同じように感じる方がいらしてほっとしました。
    (恥を忍ぶだなんて、全然大丈夫ですよー 書いて下さって嬉しいです)
    あ、この監督さんの映画はこれが初めてだったんです。
    1作目ということは「カストラート」でしょうか。
    この映画も強烈そうですねー。題材が題材ですものね。
    でも面白そう。観てみたいです。

    ブルグミュラーはやっぱりその曲集だったのですね。
    タイトル付きがハノンやバイエルやツェルニーやらの谷間のオアシスって
    ものすごーく分かります!!(笑)
    曲そのものも可愛いし、タイトルが付くと、弾きながら色々想像できたりするし
    そうなると弾くのが断然楽しくなってきますよね。

    >大人になって弾いてみると、かなりの要素一杯で、

    ああ、これもすごく分かる気がします。
    子供の頃にやった時って、自分の理解力の限界もあるし
    先生もそれほどつっこんでなさらなかったりするでしょうから…
    今改めて教わると、得るものが多そうですね。
    私はそういう意味では、バッハのインヴェンションがもう一度やりたいです。
    と思いつつ、なかなか勇気が出なくて。
    15曲全部やり直すとなると結構な時間もかかりますしね。
    とりあえずは、今のフランス組曲で頑張ります♪

  4. みー

    アリアさん、こんにちわ。
    ありがとうございます!そうおっしゃって下さってうれしいです。
    コメントって、そうだったんですか。お返事したいけど、どうしよう~って思ってたんです(赤面中です)

    説明を読んでも、いまいちピンとこなかったものも、踊りをみたら、雰囲気やリズムの感じがぱっと掴めそうですよね。目から鱗でした。ホントに♡マズルカとかトレパークとかと違って、バロック舞踊って思いつきもしませんでした。よい記事をありがとうございます!

    「カストラート」もかなりのピンボケで、タイトルに救われた系でした。でも、ただの気色悪い老人ヘンデルには笑えます。同様に霞がかかっている一作目の「仮面の中のアリア」は、まだダンディーだったホセ・ヴァン・ダムはメインです(笑) 音楽ドキュメンタリーや音楽ドラマを撮ったりしてた人らしいですね。この監督って。

    >曲そのものも可愛いし、タイトルが付くと、弾きながら色々想像できたりするし
    そうなると弾くのが断然楽しくなってきますよね。
     
     そうなんです。あのタイトル一つで色々味付して楽しめるし、モチベーションがすごーくアップしますよね。ほんと、楽しいですよね。

    >今改めて教わると、得るものが多そうですね。

     はい。今回のおさらいは25番全部やったわけではなくて、エチュードの要素が強い曲だけだったんですが、「おしゃべり」で連打を鍛えられたり、「さようなら」で三連符のタッチを矯正されたりetc.etc.テンコ盛りでした。

    >私はそういう意味では、バッハのインヴェンションがもう一度やりたいです。
     
     アリアさんもそう思ってられるんですか?
    私もなんです。最近インヴェンションが終わったので、バッハの他の作品はわかりませんけど、バッハって何度やっても格別おもしろいんだろうなーって思います。 
    確かに時間は気になりますよね。
    やり直したい曲もたくさん、やりたい曲も眩暈がするほど限りなく、です。幸せなことに。

  5. アリア

    みーさん、こんにちは。
    どこのブログもそうなのかはちょっと分からないんですが
    でも大抵の管理人さんは、コメントやお返事のお返事歓迎だと思いますよ~。
    どうぞお気楽になさって下さいね。^^

    あらら、1作目は「カストラート」ではなく「仮面のアリア」だったんですね。
    調べてみたら、こちらはオペラ映画でしたか。
    うーん、オペラは実はまだ全くの未知の領域なのでよく分からないのです。
    こういう映画からオペラの魅力に目覚めたりするかしら~。
    ホセ・ファン・ダム… ベルギーのバリトン歌手さんですね。
    アマゾンのレビューを見てみると、みなさん大絶賛でちょっとびっくりです。
    ああ、音楽ドキュメンタリーや音楽ドラマの人だったんですか。道理で~♪
    そういった音楽関係の監督さんといえば
    ブルーノ・モンサンジョン監督の音楽DVDをいくつか観たことがあります。
    グレン・グールドとかリヒテルとかを題材に撮ってる方なんですけど
    私が観たのはそういう超有名人のではなくて
    ダヴィッド・フレイとか、ピョートル・アンデルジェフスキなんですけど
    すごく面白かったです。

    インヴェンションは、やるなら15曲全部やりたいし…
    でも以前やってる曲ばかりとはいえ、1回で上がれるとはちょっと思えないし
    月2回の今のレッスンペースだと1年半は余裕でかかっちゃう。う~ん、長い~。
    いや、まだ若ければいいんですけど、もう結構いい年なので。(笑)
    他にそれほどやりたい曲がなければ、それもまたいいんですけど
    ちょっと前にシンフォニア15曲がようやく終わったところなので
    やっぱりちょっと躊躇ってしまいます。なので今は自分で復習中。
    思うようには進まないし、独学ってやっぱり効率悪いなと思うんですけど
    時間を作っては、楽譜とにらめっこしてます。
    そういうのも何かの糧になればいいなあって思うんですが~。

    みーさんは、ブルグミュラーもインヴェンションも終わられたところんですね。
    やりたい曲ってほんといっぱいありますよね。
    1曲がある程度弾けるようになるまでかかる時間のことを考えると
    やっぱり色々と考えてしまいますね~。

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