2011年07月01日

チャイコフスキー国際コンクール その6

Category : 音楽的催事 

チャイコン、30日に終わっちゃいました。なので関連記事もこれが最後です。
本選は、アレクサンドル・ドミトリエフ指揮・ロシア・ナショナル管弦楽団でのピアノ協奏曲。2次審査とはまた違うオーケストラと指揮者です。最後の5人がそれぞれチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番と任意の1曲を演奏しました。

ロマノフスキーさんは、まずファイナル初日の1番手。チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番からだったんですが、残念ながらこれが不調。指揮者とオケの重さ、乗りの悪さ、粘っこさに足を引っ張られたまま、なかなか自分のペースを掴むことができないままミスタッチも多くて、モーツァルトのピアノ協奏曲の悪夢再び…? もしや意図的に意地悪されてる…?! と一時はそこまで思ったのですが、3楽章に入った頃からちょっとふっきれたのか、それとも開き直ったのか、オケに合わせ過ぎることなく、かといって外れ過ぎるわけでもなく、少しずつ自分の調子をを取り戻しましたよ! …でもやっぱり1・2楽章の不調が痛かった。その後ソンジンくんのラフ3を経て、その日最後はトリフォノフくんで再びチャイコフスキーのピアコン1番。これがもう本当に素晴らしい演奏で! 指揮者もオケもすっかり乗ってきてるし! さっきは一体なんだったのよー状態。もちろんトリフォノフくんにはあの指揮者やオケを上手く乗せることができて、ロマノフスキーさんにはそれが難しかったということなんでしょうけど… やっぱり1番手というのもありますよね。ファイナル前に一度順番をシャッフルし直して欲しかったわー。

でもファイナル3日目のラフマニノフのピアノ協奏曲3番の方は素晴らしかった…! この日も最初の演奏だったんですが(そんなんばっかりだ)、この日はチャイコン1番の日とは全然違いました。最初から自分のペースで自分の音。オケを引っ張る引っ張る。そして音が本当に綺麗で! すっかり引き込まれましたー。指揮者もオケもすっかりロマノフスキーさんのペースに引っ張られて、今回はすごいいい感じ。多少鍵盤をひっかけても、そんなの全然気にならないぐらい。ラフマニノフのピアノ協奏曲は元々好きだけど、3番がこんないい曲だったなんて気がついてなかったよ。ロシアのラフマニノフ。大人なラフマニノフ。そう、私はロマノフスキーさんのこういう演奏が聴きたかったのよ! うわあ、2次のソロの感動再び!(感涙)

全部の演奏を見て1つ感じたのは、ロマノフスキーさんはとても長い時間をかけて自分のレパートリーを作り上げていく人なんだろうなということ。1次で弾いたハイドンのソナタは2001年のブゾーニ国際ピアノコンクールで優勝した時の優勝者リサイタルのCDに入ってるし、パガニーニ・バリエーションや、2次のシンフォニック・エチュードは、CD録音した曲だし。ラフ3だって既によそのオケで演奏してるし。1次のチャイコフスキーの曲や2次のラフマニノフのソナタはCDには入ってないですけど、これもきっと長い時間かけて完成されてきたものなんだと思います。モーツァルトやチャイコフスキーのピアノ協奏曲で若干不調だったのは、その時間が足りなかったのではないかしら、と思ったりしました。才能もすごくあるんでしょうけど、基本的に努力の人なのかも。

他のファイナリストにも触れておくと…
チャイコフスキーのピアコン1番が好調だったトリフォノフくん、リハ映像を見た時はどうなることかと思ったショパンですが、本番では打って変わった出来栄えで!(リハの時もう全然どうにもならなくて、トリフォノフくん明らかにショックを受けて表情もものすごく硬かったし、先生らしき人が指揮者に直接話しに行ったりしたりしてました) やっぱりこの人は指揮者やオケを乗せるのが上手い人なんですね。気持ち良く弾けたようで本当に良かった。
そしてチェルモフさんもなかなか良かったです。テクニック的には他の面々に劣るのかもしれないけど、ファイナルに残ったコンテスタントの中で唯一結婚して子供もいるからなのか、音にすごく温かみがあって素敵でした。包容力のある演奏。チャイコフスキーピアノ協奏曲1番も、これぞロシアという感じですごく良かったし、ブラームスのピアノ協奏曲1番も素敵でした。もっと練習する時間があればよかったのにね。でもあの深みのある音は魅力的。ブラームスの他の曲もぜひ弾いて欲しいな。
ロシア・ウクライナ勢に対して、韓国2人はメカニックなイメージ。指はものすごく回るし、恐るべき超絶技巧なんだけど… もっと1つ1つの音に彩りや深みが欲しかった。私にとっては、心が浮き立つような演奏ではなかったです。特にソンジンくんは、素直にピアノだけを弾いて生きてきたのでしょうか。もっと人生経験を色々積んだらいいかも! 先生に反抗とかしてみるのもいいかも! 本を読んだり映画を観たり、何か他のことをやってみるのもいいかも! そしてヨルム嬢はカプスーチンがとても良かったし、自分に似合うものが分かってる賢い人のようだから… それに素顔がとても可愛いって聞いたんですよね。男勝りのフォルテッシモもいいけど、そういうところがもっと演奏に出てくればいいのにね。(何様だ、私)

もう審査員が出した結果なんてどうでも良くなっちゃったんですけど、正式順位はこんな感じ。

  1.ダニイル・トリフォノフ(Daniil Trifonov -Russia-)
  2.ソン・ヨルム(Yeol Eum Son -South Korea-)
  3.チョ・ソンジン(Seong Jin Cho -South Korea-)
  4.アレクサンダー・ロマノフスキー(Alexander Romanovsky -Ukraine-)
  5.アレクセイ・チェルノフ(Alexei Chernov -Russia-)

いろんな大人の事情もあったんでしょうけど、その中で勝ち抜いたトリフォノフくん、おめでとう!!
そしてロマノフスキーさんは特別賞をもらいました。4月29日に亡くなったピアニストで名教師だったクライネフの名前を冠した賞です。

  Vladimir Krainev Award:アレクサンダー・ロマノフスキー(Alexander Romanovsky -Ukraine-)

コンクールの結果も確かに重要ですが、でも実際にはただの通過点というかスタート地点にしか過ぎないし、それよりもこれから先活躍していけるかどうかが重要ですよね。一時もてはやされても、その後に続いていかなければ全然意味がないし。ファイナリストが今後それぞれに成長して活躍してくれるのを祈るばかりです。

今晩のガラコンサートで、ロマノフスキーさんはショパンのノクターンを弾くそうです。トリフォノフくんはショパンチャイコフスキーのピアノ協奏曲2・3楽章ですって。チェルモフさんは何を弾くのかな~。(上位入賞者だけだったらしく、チェルモフさんの出番はありませんでした… 残念)

*****

 
それはともかくとして。今回色んなピアニストに出逢えてものすごーく楽しかったです。結局のところ、コンクールの醍醐味ってこれですね。気に入ったピアニストさんを見つける、今まで知らなかった素敵な曲を知る、既に知ってた曲の新たな魅力を知る♪
始まった時点ではロマノフスキーさん以外は全然知らない状態だったんですが、コパチェフスキーくんにも出会えたし! 彼はきっとこれから先、着実に演奏家としての道を歩んでいってくれると思いますし、彼のラフ2を聴く機会もまたあるはず。親日家のようなので、日本でもどんどんリサイタルをしてほしいな。トリフォノフくんは既に人気者で、ファンがいっぱいいるし、演奏も素敵だし、心配いらなさそう。作曲もするそうだし、指揮もしたいようなので、そちらでもいずれ名前をあげていくのかも。50年後には彼の名前を冠したコンクールなんかができてたりして~。(笑)
1次で落ちてしまったグローモフさんにもぜひ頑張っていただきたいし。2次で落ちてしまったクンツくん、ルビャンツェフくんにも、まだまだ未来がありますしね。

今回、チャイコンの音源で繰り返し聴いたのは、まずロマノフスキーさんの2次。特にソロの方のシンフォニック・エチュードは素晴らしすぎます。1次のパガニーニ・バリエーションもすごく良かったんですが、2次のシンフォニック・エチュードはさらに…! 聴くたびに、最初の音から魂を持っていかれてしまうぐらい。モーツァルトのピアノ協奏曲も、その時は大騒ぎした割に後で聴き返してみるとなかなか素敵だったので(おぃ)、本選が始まってからですが、結構繰り返し聴きました。
コパチェフスキーくんの方もよく聴きましたよ。1次もよく聴いたんですけど、2次の方が多かったかな。彼のクライスレリアーナは、本当に素敵。

同じように素晴らしいと思っても、繰り返し聴きたくなる演奏とそれほど繰り返し聴きたくならない演奏の違いってどこにあるんでしょうね。もちろん「好み」だと言ってしまえばそれまでなんですが… 演奏される曲の好き嫌いというのももちろんあるでしょうし、聴き手側のその時ののコンディションも影響するでしょうし。先入観だってあるはず。でも、もっと何かありますよね。私の場合はどうやら、心を浮き立たせてくれるかどうか、みたいですが。とは言っても、それが何なのかは上手く説明できないのですが。紡ぎだされる1つ1つの音だけではなく、作り込まれた細部だけでもなければ綿密に構築された全体像だけでもなく、もちろん超絶技巧でもなく。でもそこに確かに存在する何か。そのピアニストでなければならない何か。

来日してリサイタルがあったら行きたいのは、やっぱりまずロマノフスキーさんとコパチェフスキーくん。ぜひ来日して、関西にも来てほしいですー! CDも出してー! 買うからー!
そして↓のは、左がロマノフスキーさん、右がコパチェフスキーくんです。2人ともすごく手が大きいみたいですね。指が長くて、弾いてる時の動きがすんごい綺麗で、見ているとうっとりします♪(手フェチです)

Alexander Romanovsky Filipp Kopachevskiy

ということで、そろそろ普通の生活に戻ります。いや、もうほんと楽しいお祭りでした。もう本当に終わってしまうのね。ロマノフスキーさんが上位を取れなかったことに、やっぱり寂しさと虚しさを感じつつ…(ああ、トリフォノフくんのファンだったら良かったのに、私)
どうもお騒がせしました。ぺこり

Comments (2)

  1. 私も2週間、本当に楽しい日々でした〜。いっぱい聴きました。
    その中で今も耳に残っているいくつかの音楽、何でもない日常の瞬間にもふっと蘇って、あ、と立ち止まってしまういくつかの音。これ何だっけ、そうだコパチェフスキーくんだ!クライスレリアーナの崩れ落ちるような終曲…などと。
    コンクールを聴く私たちの側にも、特別な集中力があったのでしょうね。
    今は、大きな波がひいた後の貝殻をひそひそと集めて楽しんでます。
    アリアさんのつぶやき毎日すごく楽しみでした。シューマン感知器(笑)。ショパンもリストも好きですけど、私も今回はシューマン組に惹かれてました。実際、シンフォニック・エチュードとクライスレリアーナで凄いシューマンが2つ出ましたし。演奏者の個性と曲・作曲家の個性が見事に融合していて、曲がすごいとか演奏がすごいとかいう次元を超えた世界が立ち上がっていた気がします。

    あと、ロマノフスキーさんには、ブラームスもっと開拓してほしいなーと思ったり。
    シチェドリンの完成度からして、現代音楽もいいだろうなと思ったり。
    16才のブゾーニ優勝者ライブと聴き比べてみて、うーん、なんだかんだ言って、26才にもなると色気がありますなぁ…と照れたり。笑。
    コンクール出場は、長い時間をかけて丁寧に作ってきたレパートリーを世に問いたい、という意図もあったのでしょうか。授賞式の表情を思うと、私も寂しさと虚しさであらゆる気力が萎えそうになります…。でも出てくれて、聴けたことが本当に何より嬉しかったので、やはり幸せでもあり…(複雑だな)。
    ああ、長々とすみません。ではここで。関西に来たらぜひ一緒に行きましょうね〜♪

  2. アリア

    本当に楽しかったですよね~。
    私、コンクールをこんなにちゃんと追いかけたのって初めてなんです。
    こんなに楽しいものなのか!とすっかり開眼してしまいましたよ。
    そう、日常のふとした瞬間に思い出して、また聴きたくなるんですよね。
    思いがけない人の演奏が、意外と深く自分の中に残ってるのを発見したりして。
    ほんと、特別な集中力があったのでしょうね。

    私こそ、典さんのつぶやきすごく楽しませていただきましたよ。
    私には逆立ちしたって紡ぎだせないような言葉がするすると出てきて
    すっかり違う次元に連れていってくれるんですもの。曲と合わせて、1粒で2度美味しい♪
    うふふ、シューマン感知器は、どうやら標準装備されていたらしいです。
    バッハやブラームスを素敵に弾ける人は、シューマンもすごくいいことが多い気がするし
    それほど大した感知器ではないんですけど(笑)
    考えてみたら、チェルモフさんも2次でシューマン弾いてましたよね。
    シンフォニックエチュードだったので、逆に聴きづらいというのはあるのですが~
    グローモフさんやボリスさんはシューマン感知器が思いっきり反応しましたよ!
    聴けなかった演奏も多かったので残念ですが、それはまたいずれ機会がありますよね。

    うん、ブラームス、もっといろいろと弾いて欲しいですね。あとはやっぱりバッハかな。
    あのバディネリみたいな感じで、バッハのCDを作っていただきたいです。
    そして現代音楽は正直よく分からないんですが、あのシチェドリンはとても良かったので
    もしロマノフスキーさんが弾いてくれれば、そこから少しずつ入っていくこともできそう。

    クライネフ賞の時のあのうるんだ目を思い出すと、
    もしやその後の展開を知ってたのかなと、もう本当に胸が苦しくなってしまうのですが…
    でも今回、同じ時間を共有できたというのが、まずものすごく嬉しかったです。
    こんな機会、滅多にありませんよね。
    内容的にも、リサイタル3回分ぐらいじゃきかないですし!(笑)

    ほんと、関西に来たらぜひご一緒させて下さいね! 楽しみです~。

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