2011年11月09日

「音楽の正体」その6

Category : 楽典覚え書 

第11章「坂本九・オサリバン・ミスチルの旅したパラレルワールド -胸キュン準固有和音の構造学-」

9章・10章は倚音(いおん)による「泣き」の話でしたが、「泣き」は旋律上のものだけでなく、和声構造上のテクニックもあります、という章。それは「同主短調」。

同主短調とは、同じ主音を持つ短調のこと。ハ長調におけるハ短調。同じ主音(ド)を持つけれど、ハ長調とは違って、物悲しい雰囲気が漂う調。SFにおけるパラレルワールドのようなもの。同じ主音だから転調する必要もなく、簡単に行き来できるのだけれど、元の世界と似て非なる世界。曲の中にに物悲しさを自然に流れ込ませることができ、陰陽の抑揚をつけたらさっと長調に戻ればいいという便利な調なのだそう。人生の光と影を自然に作り出すことができるというわけですね。

そして、長調にとっての和音が「固有和音」であるのに対して、同主短調の和音は「準固有和音」というのだそうです。
ポップスの世界でよく使われる準固有和音は、 ∘II と ∘IV 。(説明がありませんでしたが、どうやら左側に「∘」をつけると準固有和音を示すみたいです) ロックの世界でよく使われるのは ∘III と ∘VI と ∘VII 。ハ長調の場合だと、ポップスでよく使われるのは Dm-5 と Fm 。ロックでは E♭と A♭と B♭。(ハ長調における V 「ソシレ」は、ハ短調においても「ソシレ」なので使う意味がない)
E♭と A♭と B♭がポップスで使われない理由は、その3つがメジャーコード(長三和音)だから。せっかく物悲しい雰囲気を出そうとしているのに、わざわざメジャーコードを借りてくることはない、せっかくならマイナーコードを借りたほうがよい、ということ。でもロックでは逆に、クラシックの世界では滅多に使われることのない ∘VI と ∘VII が逆に偏愛されるのだとか。例えばローリング・ストーンズの「ギミー・シェルター」の印象的な部分は、ほとんどこの ∘VI と∘VII によって作られているのだそうです。(この曲、ストーンズの中で一番好き!)

そしてポップスに話を戻すと、よく使われているのは ∘II と ∘IV 。ハ長調で言えば Dm-5 (レファラ♭)と Fm (ファラ♭ド)で、どちらもラの♭が共通しています。ハ長調の中にもラの音はあるのに、半音違うこのラ♭が流れ込むだけで「一種独特の胸キュン状態をかもしだす」のだそうです。一見安定しているように見えていた長調の世界が、わずか半音1つで悲哀あふれる世界にすべり落ちていってしまうものなんですって。そして名曲とされる曲は、そういう音と歌詞のマッチングもとても巧みなのだとか。
具体例としては、坂本九の「上を向いて歩こう」、Mr. Children の「innocent world」「everybody goes」、Gilbert O’sallivan の「Alone Again」など。

第12章「シカゴのブラス音が雑踏に消える時 -音画的手法とは何か-」

普通の楽器を鳴らしているだけなのに、その情景が浮かぶ… 音楽理論の世界では、そのように音で絵を描くことを「音画的手法」と呼んでいるのだそう。有名なのは、リムスキー・コルサコフの「熊ん蜂の飛行」。細かく動くヴァイオリンの音がまるで蜂の飛ぶ音のように聞こえてきます。クラシックだと、あとはベートーヴェンの「運命」の冒頭のあの扉を叩く部分や、「田園」の中のカッコウの鳴き声に似せた部分、マーラー「巨人」の宮廷入場風のファンファーレなど。でも描写に徹して恥ずかしげもなくやらない限り、誤解されたり気づかれなかったりという憂き目にさらされる可能性も大。(実際、ここでドゥービーブラザーズの「ロング・トレイン・ランニン」も挙げられていたのですが、あの前奏のギターのリフが「列車の車輪が勢いよく回る様」だとは今の今まで知りませんでしたよ)

そこで、楽器で真似なんてしないで、本物の音(具体音)を使ってしまおう!なんていうのも出てきます。ビートルズの「バック・イン・ザ・U.S.S.R 」の冒頭の飛行機の音とか、「イエローサブマリン」の潜水艦の中の音」とか、テレビ映画「ローハイド」のムチの音とか、ハイドンの「おもちゃの交響曲」のおもちゃの音とか。

でもそうなると具体音だけ集めても音楽になるじゃないかということで、そういうジャンルも出てくるわけで…。町の雑踏の音や人の声が入り混じるビートルズの「レボリューション9」や、ピンク・フロイド「原子心母」、シカゴの「プログレス?」とか。

うーん、こういう発展史的なものにはあまり興味ないなあ。

Comments (2)

  1. monet

    アリアさん、こんにちは。
    いつもながらの、凄い記事、ただ尊敬します!まるで、専門家みたいですね。ひょっとして、音楽をお仕事になさっていらっしゃるのでしょうか?一度アリアさんの演奏を、ぜひお聴きしてみたいです。
    今回の一連の記事、コメントしたくて、一生懸命読んでいたのですが、わたくしごときには、分かりませんでした~涙。意味のないコメントになってしまって、ごめんなさい。

  2. アリア

    monetさん、こんにちは。
    えええーーーっ 全然音楽関係の仕事なんかじゃないですよ。
    私、全然音大じゃないですし!
    大人になってピアノを再開してから、今頃になって楽典の本を読んで独学中…
    しかも全然進んでない状態ですぅ。(あらららら)

    最近の記事は読んだ本のまとめなんですけど
    この文章ではイマイチ分かりませんでしたか… それは残念。
    ごめんなさい、私もまだまだ修行が足りませんね。(陳謝)

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