2011年11月16日

「音楽の正体」その8

Category : 楽典覚え書 

第15章「プリンセスプリンセスの見つけたダイアモンド -転回形と半音階的進行-」

「プリンセスプリンセス」の「ダイアモンド」の中で使われているのは「半音階進行」。半音階進行とは、かつてモーツァルトも愛用した技法で、「いわばピザにふりかける赤唐辛子のように定番のスパイスとして」使われるものなのだそう。そしてこの技法を使いまくり「表面真っ赤っ赤になってしまうほど赤唐辛子をかけた」のは、ワーグナー。それによって西洋音楽が破壊されたとまで言われたそうですが…。

半音階のことを理解するためには、まず和音の転回形を。
「ドミソ」の和音は「ミソド」「ソドミ」と鳴らすこともできます。音楽理論上では、「ドミソ」の基本形に対して「ミソド」が第1転回、「ソドミ」が第2転回。そしてこの3つの形、同じもののように見えて、実はその効果はそれぞれに違うのだそうです。ひっくりかえるほどに、安定性や信頼性が失われていくのだとか。だから曲に安定感を与えなければならないところ、例えば曲の始まりや終わりの I 度の和音、 V → I と進行する時の和音は、常にきちんと響く基本形を使うのですね。それ以外のところは比較的自由なようなんですが。
初心者がピアノでポップスを弾くと一本調子になりがちなのは、この辺りの兼ね合いのようです。譜面のコード進行を見ながら、その通りに鍵盤を押さえると、基本形ばかりになってしまいがち。適当に転回形を混ぜながら弾かないと、いつも肩に力が入ったような状態になってしまうのだそうです。基本はベースラインがなだらかなメロディになるように転回形を織り込んでいく、だそうなんですが… 咄嗟には難しいよー。

そして、比較的自由な時の和音の進行で定番なのは、音階の音通りに1つずつ下がっていく順次進行と、半音ずつ下がっていく半音階的進行なのだそうです。(もちろん上にあがっていく進行もあり得ますが、実際にはそれほど多くないらしい) どちらもベースラインに現れた時に「音楽に大変な流麗さをもたらし、楽曲をグッと豊かにする」のだとか。

その進行が使われている曲で有名なのは、山下達郎「クリスマス・イブ」や松任谷由美「守ってあげたい」、プリンセスプリンセス「ダイヤモンド」など。特に「ダイヤモンド」は、基本形に始まり、第2転回形→第1転回形→第1転回形→第1転回形→第2転回形→第1転回形と不安定な状態が続き、メロディの区切りの8小節目でドミナントの基本形に戻る、そして上向きの半音階進行も巧みに組み合わせられているという構成の上手さなのだそうです。(へええ)

第16章「竹内まりやの「告白」に鼓動を聞く -内声と外声-」

音楽を聴いていて、普通一番最初に耳に入ってくるのは一番高いところで鳴っているメロディ。でも一番低いところで鳴っているベースも聞き取れるようになると、俄然音楽の楽しみが広がるそうで…
例えば、竹内まりやの「告白」。これは冒頭部分で電話の音が鳴り、続いて緊張感のあるキーボードの和音が鳴り、そして入ってくるベースの音はまさに心臓の鼓動。そこにバスドラムが重なってその音を強調。聴く側が実際にはそれと意識していなくても、ある種の雰囲気は伝わる、演出的意図を持ったベース。音画的手法を用いたベースの好例なのだそうです。そして中間音域ではピアノの半音階進行が。

ポピュラーでもロックでも、名曲と言われる曲は内声にも綺麗な旋律が入っているものなのだそう。メロディを楽しみ、歌詞を楽しみ、和音の流れを楽しみ、ベースを楽しみ、そして内声を楽しむ。芝居にたとえれば、主役だけが頑張っているのではなく、台詞もないようなその他大勢まで、みんなが素晴らしい演技をしてこそ、よくできた舞台になるというようなものなのだそうです。竹内まりやの「告白」は、この内声まですごく上手くできている良い例だそうなのですが…

まあ、この辺りは普段からバッハを聴いていれば、改めて言われなくても分かりますよね。

Comments (4)

  1. ペンネ

    アリアさん、こんにちは。

    しばらくご無沙汰しておりました。
    ここ数日、ようやく自分の時間が取れるようになったので、
    アリアさんの記事を少しずつ読んでいます。
    すごく気になってたんです。

    めっさ面白い!興味深いです。
    この「音楽の正体」を含めたアリアさんの
    「楽典メモ」シリーズは、全部プリント・アウトして
    何回も読みたい。
    また夜、ゆっくり読ませて頂きます。

  2. アリア

    ペンネさん、こんにちは~。

    わあ! ありがとうございます。
    この本、本当に分かりやすくて面白いんですよー。
    しかも私レベルだと、ものすごーーく勉強になるし。
    今までは、楽典の本を眺めて、禁則?ふーん?という状態で
    意味も分からず方程式の問題を解いてたようなものなので
    いざ意味が分かってみると、面白くてうはうはしてます。(笑)
    そうか、音大出の方でも面白く読める本だったのですね~。

    本当は私の文章になんて通さずに、実物を読んで頂きたいのですが
    これがなんでか絶版状態なんですよね…
    もったいないですよねえ。いい本なのにな~。

    あ、でもそれ以外の楽典関係の記事はどうなんでしょう…
    興味深く読んで頂けるのなら、ものすごく嬉しいのですが
    基本的に普通の楽典の本のまとめなので… てへへ。

  3. ペンネ

    アリアさん、おはようございます。

    アリアさんのレポがわかりやすくて、おもしろくて、
    何度もじっくり読んでいるうちに夜が更けてしまいました。

    そして探しましたよ、絶版という事ですが、
    中古が結構出回っていましたんで、Amazonでポチりました!
    これ、放映された時、私は既に香港在住だったので、
    そういう番組があった事自体、知らなかったんです。
    アリアさんのおかげです!ありがとうございます(ぺこり)。

  4. アリア

    ペンネさん、こんにちはー。

    わあ、アマゾンでポチられたのですね!
    いえいえいえいえ、私が面白く書けたとしたら、この本のおかげですから~。
    でも夜遅くまで読みふけって下さったなんて、ありがとうございます。
    かなりの部分が本に書かれてることそのまんまって感じですが(…いいのか私…)
    本には簡単な譜面とコード進行も書かれてるので、更に楽しめると思います。
    本が届くのが楽しみですね!

    番組が放映されたのは、20年ぐらい前らしいんですけど
    その頃には既に香港にいらしたんですねえ~。
    私もあと2回でまとめるのが終わるので
    そしたらYouTubeで番組の動画を探してみようと思ってます☆

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