2011年03月15日

「レントより遅く」青柳いづみこ

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青柳いづみこさんの「浮遊するワルツ」。収められているのはショパンのワルツ6曲、シューベルトの「高雅なワルツ」(ドホナーニ編)、ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」、サティの「嫌らしい気取り屋の3つの高雅なワルツ」、リストの「メフィスト・ワルツ第1番」、そしてドビュッシーの「ロマンティックなワルツ」と「レントより遅く」。

6人の作曲家によるこれらの曲に共通するのは、ワルツだということなんですが、シューベルトの「高雅なワルツ」、ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」、サティの「嫌らしい気取り屋の3つの高雅なワルツ」が並ぶという構成も面白いですね。ラヴェルのこの曲はシューベルトの曲からきてるわけだし、サティの言う「嫌らしい気取り屋」というのはラヴェルのことだし!
その後にリストが来ると、聴いてる分にはちょっとびっくりしてしまうのですが、でもこれもきっときちんと考えられた配列なのでしょう。ショパンの(踊るためのものではないにせよ)ワルツらしいワルツに始まり、シューベルト・ラヴェル・サティ。そしてリストのメフィストワルツで、美しく華麗なものだというワルツの表向きのイメージが決定的にひっくり返されているのかなと思います。そして世紀末のデカダンを感じさせるドビュッシーへ。

私はショパンはあまり好きではないので… それなのに6曲中5曲をやったことがあるというのもなんだかフクザツで、正直「なぜショパンを6曲も?」という気持ちがあるのですが(演奏は素晴らしいんですが!)、シューベルトの(いつも通り冗長ながらも・笑)素朴で可愛らしいワルツからラヴェル・サティと続けて聴けるというのも面白いし、青柳さんの弾かれるリストのメフィストワルツもとても素敵。
それに何といっても最後のドビュッシーの2曲がいいのです。ドビュッシー弾きとして有名な青柳いづみこさんですが、やはりそれだけのことがありますね! パスカル・ロジェ、ミシェル・ベロフ(新旧)、アルド・チッコリーニ、ヴェルナー・ハース、モニク・アースと聴き比べた中でも、青柳さんの「レントより遅く」が、テンポといい音色といい歌い方といい、気持ちに一番しっくりきてとても好き。そしてこのCDを通して聴き終えてみると、アルバムタイトルの「浮遊するワルツ」がとても分かるような気がしてきます。

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青柳いづみこ(Werner Haas 1950 – )
  東京都出身のピアニスト、エッセイスト、大阪音楽大学教授。ドビュッシー研究家。
  東京芸術大学音楽学部卒業。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業。
  安川加壽子とピエール・バルビゼに師事する。
  演奏活動だけでなく、執筆業も積極的にこなす。



2011年01月24日

「子供の領分」ハース

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ヴェルナー・ハースのドビュッシー全集の1巻です。「前奏曲」1・2巻と「喜びの島」「映像」1・2巻、「版画」「子供の領分」「ピアノのために」「アラベスク」2曲、マズルカといった全46曲が収められた2枚組。

ドビュッシーのCDの記事は久しぶり。もっとフランスのエスプリを感じるためにと、これまでフランス人ピアニストの演奏を中心に聴いてきてたんですが、ヴェルナー・ハースはドイツ人。モニク・アースと同じ「Haas」という名字でも、フランス人の「アース」に対してこちらは「ハース」です。まだまだこれからという若さで亡くなったようですが、ドビュッシーやラヴェルの録音では高い評価を得ていて、ドビュッシーのピアノ曲全集の録音ではグランプリ・デュ・ディスク賞、ラヴェルのピアノ曲全集ではアムステルダム・エジソン賞を授与を受賞されているのだそう。

このCDの「子供の領分」を聴いてまず思ったのは、「私… 似てる?」ということ。プロのピアニストの演奏に似てるだなんて、しかも先生にあれだけこてんぱんにやられてるドビュッシーで! なんておこがましいことを! というのはあるんですが、なぜだかとても近しいものを感じたんですよね。以前私がちらっとだけ公開したドビュッシーの録音、あれを聴いた時の感覚に近いというか… もちろん表現力もテクニックも月とすっぽん、雲泥の差、言語道断なのはよく分かってるのですが。
あの時の「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」だけじゃなくて「人形へのセレナード」も。ほら、「小さな羊飼」も! 演奏を聴いてると、私が弾こうとしてる(正確には、先生と一緒に作り上げようとしてる)ドビュッシーのイメージにとても近いような気がしてなりません。先生のレッスン室にはミッシェル・ベロフのCDがあったし(旧盤の方ね)、先生がテンポを取る時は結構速いし、レッスンの時に仰る注意点からも、てっきりベロフがお好きなんだろうとばかり思っていたんですが。ああ、でも先生の好みがどうであれ、私にはベロフのようには弾けないですしね。ベロフの演奏は好きだけど。私のいいところをふくらませようとしたら、ハースのタイプに少し近づいたというのが本当のとこなのかも。

ハースの演奏は、すっきりとしてて余計なものがないという感じ。他のピアニストならもっともっと歌わせるだろうってところでも、比較的あっさり。もちろんテンポを揺らすこともありますけど、それも比較的控えめ。なんだかものすごく楽譜に書かれている通り弾いてるって印象です。でもそのあっさり加減が好き。音もとても綺麗だと思うし、すごく素敵な演奏だと思います。演奏としてはあまり速くないんですけどね。このテンポがまた何ともしっくりきてすごく好きです。

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ヴェルナー・ハース(Werner Haas 1931 – 1976)
  ドイツのピアニスト。
  20世紀音楽の専門家であり、とりわけフランス印象主義音楽の演奏を得意とする。
  シュトゥットガルト音楽院を卒業後、ワルター・ギーゼキングの個人指導を受ける。
  1950年代にヨーロッパ中でリサイタルを開き、大きな成功を収める。
  ベートーヴェンやショパン、プロコフィエフ、カバレフスキーなどもレパートリー。
  自動車事故により急逝。



2010年09月24日

「子供の領分」ロジェ

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パスカル・ロジェの「ドビュッシー:ピアノ作品全集 Vol.2」。収められているのは「版画」「子供の領分」「2つのアラベスク」「ベルガマスク組曲」「レントよりおそく」「バラード」「マズルカ」「小さな黒人」の全19曲。フランス人ピアニストの弾くドビュッシーを聴いて、フランスの香りを感じよう!企画・第5弾。ついこの間までは、それほど大好きというわけではなかったはずのドビュッシーなのに、なんだかだんだん面白くなってきて、こうなったらとことん付き合ってみようじゃないの!という勢いになってきてます。(笑)

パスカル・ロジェのドビュッシーのCDといえば右のものが有名だと思うんですけど、実はこれまでちゃんと聴いたことがなかったんですよね。気になりつつも、なんとなくそそられなくて。なので「正統派」というイメージだけ。
でも、今回改めて聴いてみて驚きました。なんて綺麗な音なんでしょう! 柔らかめの明るい音は、まるで夢の世界のようですね。そして繊細な表現。透明度の高い明るい色彩に、時には物憂げなため息をついているような影が差して… モニク・アース同様、あまりクセがない演奏とも言えるんですが、「これだけ綺麗な音だったら!」です。一体、どうやったらこんな音が出せるようになるんでしょうね。タッチがもう全然違うんだろうなあ… 鍵盤に触れる時も鍵盤から指が離れる時も、もちろん触れている最中も。

これはドビュッシーピアノ作品全集の第2巻で、第1巻と第3巻も既に出ています。そして近々第4巻も出るらしいです。第1巻に収められてるのは「前奏曲」2つ、第3巻に収められてるのは「映像」「喜びの島」「スケッチ帳より」「ピアノのために」「英雄の子守歌」「アルバムの1ページ」「舞曲(スティリー風のタランテラ)」「ハイドンを讃えて」「夢」。第4巻には、まだ入ってなかった12の練習曲と残りの小品が入るのかな。となると、全4巻でいけそうですね。今回の2枚目は主な人気曲を網羅するような選曲ですが、この音の美しさを堪能するためにだけでも、他のも全部聴きたくなってしまうなあ。あ、でも今回入っていた曲にはこの美しさがよく似合ってたけど、違う雰囲気の曲となるとまたちょっと印象が変わってくるかもしれないですね。それに基本的に輪郭が柔らかいふわっとした音なので、ロジェばかり聴いてたら、輪郭線のくっきりした演奏が恋しくなっちゃうかも。(笑)
   

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パスカル・ロジェ(Pascal Rogé 1951- )
  フランスのピアニスト。11歳の時にパリでデビュー。
  パリ音楽院を首席で卒業後(ピアノと室内楽)、ジュリアス・カッチェンに師事。
  1971年、ロン=ティボー国際コンクール優勝。
  磨き抜かれたテクニックと、明るい音色と透明感のあるタッチが魅力。
  レパートリーはフランス近代音楽が中心。
  サン=サーンス、フォーレ、サティ、ドビュッシー、ラヴェル、プーランクを全曲録音している。
  ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなどドイツ系のピアノ曲も。



2010年09月20日

「子供の領分」アース

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これはフランスの女流ピアニスト、モニク・アースの「月の光 ~ドビュッシー / ピアノ名曲集」。「ベルガマスク組曲」「ピアノのために」「夢」「夜想曲」「ロマンティックなワルツ」「映像第1集」「映像第2集」「2つのアラベスク」「レントより遅く」「喜びの島」「亜麻色の髪の乙女(前奏曲集第1巻)」「沈める寺(前奏曲集第1巻)」「ミンストレル(前奏曲集第1巻)」「水の精(前奏曲集第2巻)」「花火(前奏曲集第2巻)」「版画」「子供の領分」の全34曲が収められた2枚組です。フランス人ピアニストの弾くドビュッシーを聴いて、フランスの香りを感じよう!企画・第4弾。

このCDは、実は私が一番最初に購入したドビュッシー盤なんです。随分前のことになりますが、何かの関係でドビュッシーのCDを聴こうとした時にお店で選んだのがコレ。ドビュッシーの主要曲が網羅されてます。そして後で知ったのですが、このCD、amazonでの評判がすごくいいんですね。柔らかく暖かな音色、スタンダードであまりクセのない、ドビュッシーらしさの感じられる演奏、というのが主な評価のよう。他のピアニストのドビュッシー盤に比べてレビューがダントツで多いんですけど、モニク・アースって、もしかして日本で一番広く愛されているドビュッシー弾きさんなのでしょうか。実際聴いてみても、暖かみのある音色で親しみやすい演奏だと思います。テンポ的にも速すぎることがないし。あまりクセがない分、強い個性というのも感じられないんですが、「ドビュッシー」と聞いて想像する演奏がここにあるぞという感じ。もっとも現実のドビュッシーという人は、綺麗な曲を書く割に相当アクのある人だったようなので、もう少し何かがあってもいいかなという気はしますが… 悪くはないんだけど、今の私には正直どこか物足りない部分も残るかな。とは言え、入門編には適したCDだったと思います。
今回モニク・アースについて調べていて初めて知ったんですが、第一次大戦後に教育を受けたフランス人ピアニストは、基本的にロマン派は学んでいないんだそうですね。自国の音楽を大切にしようという風潮もあるでしょうし、感覚的なフランス音楽と論理的なドイツ音楽の気質の違いもあるでしょうけど、敵性音楽だったというのが一番大きかったみたい。ちょっと驚きました。

上のCDは抜粋盤でしたが、「ピアノ作品全集」もあります。2枚組が2つで、4枚で全曲。この2つはフランスADFディスク大賞を受賞したCDなんだそうです。(下左2つ) でもこの2つをセットで買うんだったら、下右のボックスセットの方がいいかも。こちらは似たような値段でラヴェルの全曲演奏集(2枚)もついてきますしね。モニク・アースのラヴェルピアノ作品全集がまたamazonで評判いいんですよねえ。やっぱり愛されてるんだなあ。(ボックスセットは全6枚組)

  

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モニク・アース(Monique Haas 1909-1987)
  生粋のパリジェンヌ。
  パリ音楽院でラザール・レヴィに師事、さらにルドルフ・ゼルキン、ロベール・カサドシュにも学ぶ。
  世界中で演奏活動を行い、特にドビュッシー以降の20世紀音楽の演奏で名声を得る。
  主なレパートリーはフランス・バロック音楽のフランソワ・クープランやジャン=フィリップ・ラモー
  ドビュッシーやラヴェルといった近代フランス音楽、あとはバルトーク・ベーラなど。



2010年09月15日

「子供の領分」コルトー

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フランス人ピアニストの弾くドビュッシーを聴いて、フランスの香りを感じよう!企画・第3弾は、CDではなくてYou Tubeです。
というのも、古い映像を見つけちゃったんですよ~。コルトーの弾く「子供の領分」をサイレント映画風に演出してる映像。ミュージックビデオのハシリですか? と思ったら、これはヴァイオリニストのジャック・ティボーが発案して作られたシネフォニーというものだそうです。当時庶民の間で人気だった映画という媒体を利用して、クラシックの演奏を広く鑑賞してもらおうというもの。

Alfred Denis Cortot plays Debussy in Cinephonie.

コルトーが弾いてるのは「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」「人形へのセレナーデ」「ゴリウォーグのケークウォーク」の3曲で、それぞれに可愛らしい女の子の物語風映像がついてます。映像の状態がかなり悪いのがとても残念なんですけど、でも可愛い! これがシュウシュウと子供部屋の仲間たちというわけですね。「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」では、あの黒板での計算がいいなあ~♪ 「人形へのセレナーデ」は、人形たちの動きもいいし、2人が踊るところの可愛らしいことったら! コルトーが弾きながら彼らの方を見るのも芸が細かいし。(無表情だけど) 「ゴリウォーグのケークウォーク」では、トリスタンのテーマの後の「きゃっきゃっきゃっ」ってところと、元のテーマに戻ったところで手を裏打ちしてる赤ちゃん人形が好き♪ …と、すっかり演奏そっちのけになってますが、コルトーの演奏はさすがにとても美しいです。

コルトーのCDとなると、国内盤はショパンばっかりっぽいです…。やっぱり日本でクラシック、しかもピアノとなると、売れるのはまずショパンということなんでしょうね。下左はボックスセット7枚組。ドビュッシー以外のピアノ独奏はショパン、ラヴェル、リストですが、ジャック・ティボーやパブロ・カザルスと組んだ三重奏曲の演奏が多いですね。もう少し手軽に、となると下右の2枚組でしょうか。こちらは半分近くがショパンで、その他はシューベルト、メンデルスゾーン、シューマン… ブラームスやバッハのコルトー編曲なんていうのも入ってるようです。あ、肝心のドビュッシーの曲は、どちらも「子供の領分」と「前奏曲集第1巻」の全18曲。「子供の領分」はどちらも1947年録音と書いてあったし、同じものなんでしょうね。(ボックスセットの「前奏曲集」は、色んな年代のものを混ぜて入れてるみたいです)

 

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アルフレッド・コルトー(Alfred Denis Cortot 1877-1962)
  20世紀前半のフランスを代表する大ピアニストであり、指揮者、教育者、著述家でもある。
  ヴァイオリニストのジャック・ティボー、チェリストのパブロ・カザルスとカザルス三重奏団を結成。
  ミスも多いが、美しいタッチと個性的なテンポ・ルバートで、深い詩情と多彩な感情を描きだす。
  レパートリーは比較的狭く、ショパン、シューマンなどのロマン派や、フランス近代が中心。
  著名な門下生は、ディヌ・リパッティ、クララ・ハスキル、遠山慶子、エリック・ハイドシェックなど。



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