2010年09月14日

「子供の領分」ベロフ

Category : CD(ドビュッシー) | Comments (6)  

ミシェル・ベロフの「ドビュッシー:ピアノ作品集1」。「前奏曲集第1巻」全12曲、「スケッチ・ブックから」「コンクールの小品」「ハイドンを讃えて」「かわいい黒人の子供」、そして「子供の領分」全6曲の計22曲が収められたCDです。フランス人ピアニストの弾くドビュッシーを聴いて、フランスの香りを感じよう!企画・第2弾。(笑)

サンソン・フランソワの「子供の領分」は、どことなく哀愁が漂う演奏だったんですが、ミシェル・ベロフの「子供の領分」はまた全然違いました。こちらはもっと光を感じさせるドビュッシー。透明感があって、全体的にキラキラしてます。そして見えてくる情景は、私が元々持っていた曲のイメージに近いです。例えば「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」の最後は解放感たっぷりだし、「象の子守歌」はひっそりと親密で温かい雰囲気だし、「ゴリウォーグのケーク・ウォーク」は、滑稽で楽しい感じだし… あ、「雪は踊っている」で降ってる雪は、私がイメージしているよりももっと1つ1つの粒が小さくて、凍ってるようでしたけどね。ミシェル・ベロフの演奏だと、まるで雪の万華鏡の中にいるみたい。というよりこれは「雪の女王」の城に迷い込んだイメージかなあ。いずれにせよ、サンソン・フランソワの「子供の領分」よりも現代的なドビュッシーと言えそうです。もっとも、ドビュッシーの生きていた「世紀末」の雰囲気をよく表しているのは、サンソン・フランソワの方じゃないかなあと思うんですが。
実は以前にもミシェル・ベロフのCDを聴いてるんですが、その時はあんまり音が冴えすぎていて、私の中の「子供の領分」のイメージとは少し違うなあと思ってたんです。その時聴いていたCDは右のもの。ミシェル・ベロフという方は1950年生まれだから今60歳ぐらいなんですけど、30代半ば頃に右手を故障して一度第一線を退いてるんですね。結局10年後ぐらいに復活することになるんですが、以前聴いたのは故障前の若い頃の録音。今回聴いているのは復活後のもの。透明感のある音という意味では若い頃の録音と同じなんですが、鋭く尖っていたところがやや丸みを帯びて、音がまろやかに広がるようになったような気がします。どちらが上だと思うかは個人の好き好きでしょうし、故障前の煌めきにも捨てがたいものがあるんですけど、私としては復活後の演奏の方が好き。

このCDは、ベロフによるドビュッシー全作品集のボックスの1枚でもあります。全5枚のCDのうち4枚がレコード芸術特選盤、残り1枚がレコード芸術準特選盤に選ばれてるんですって。そして今回聴いた「1」はカンヌ・クラシカル・アウォードも受賞してるんだとか。すごいですね。若い頃のミシェル・ベロフは、正直あまり好みのタイプではないんですが~(見た目の話ね) 年を重ねて魅力を増すタイプみたいですね。今はなかなかカッコ良いおじさまかと♪(髪を切った方が好き) 現在パリのコンセルヴァトワールの教授だそうです。スーパーピアノレッスン、またやってくれないかしら。(もしくはDVDを発売してくれないかなあ)

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ミシェル・ベロフ(Michel Béroff 1950- )
  フランスのピアニスト。
  1967年、17歳で第1回オリヴィエ・メシアン国際コンクールに優勝。
  1970年、パリでメシアンの「幼な児イエズスに注ぐ20のまなざし」の全曲演奏を行い注目を集める。
  1980年代半ばに右手を故障して第一線から退くが、90年代に再びピアニストとして復帰。
  ドビュッシー、ラヴェル、メシアンなど、近代フランス音楽の演奏に定評がある。
  その他のレパートリーも、プロコフィエフ、バルトークなど比較的新しい音楽が多いが
  リスト、シューマン、ムソルグスキー、ブラームス、サン=サーンスなどのロマン派も。



2010年09月12日

「子供の領分」フランソワ

Category : CD(ドビュッシー) | Comments (2)  

サンソン・フランソワの「ドビュッシーピアノ集3」。「子供の領分」6曲と「版画」3曲、「ベルガマスク組曲」4曲、「ピアノのために」3曲、そして「英雄的な子守歌」の計17曲が収められているCDです。フランス人ピアニストの弾くドビュッシーを聴いて、フランスの香りを感じよう!企画第1弾。(笑)

以前、ネットのお友達と「子供の領分」の話をしていた時に、その方がサンソン・フランソワの「雪は踊っている」がとても独特な感じで好きだと仰ってたので聴いてみたら、おお確かに!(あれっ、ちゃんと楽譜通りに弾いてるんだ!?と、それもちょっとびっくりしたんですが) これはサンソン・フランソワならではの独特な世界でした。そうでなくても「雪は踊っている」は弾き手の個性が出やすい曲だと思うし、弾き手によって降ってくる雪の感じが全然違ってくると思うんですよね。サンソン・フランソワの雪は、1つ1つの雪片が大きくてふわふわしてて… そしてどこか色合いを感じます。まるで、様々な淡い色合いを持つコットン・キャンディーのような。って、そんな「コットンキャンディ」なんて言葉の持つ楽しげな響きは全然そぐわない、静かな虚無感が漂ってるんですが。でもこれがサンソン・フランソワの雪なんだな。どこがどうなったらこんな風になるんだろう? と、不思議になります。

どの曲もとても美しいと思うんだけど、「雪は踊っている」以外だと「小さな羊飼い」に漂う孤独感もとても好き。なんだか小さなサンソン・フランソワ少年が、誰にもつかまえられないところに行ってしまって、ひっそりと戻れないままでいるような感じ。そうでなくても、サンソン・フランソワの弾く「子供の領分」は、全体的にどこか寂しさを感じさせるような気がするんですが… 「ゴリウォーグのケークウォーク」も、滑稽ながらもなんだか物哀しい感じがするし。
…あれ、「子供の領分」って、もっと可愛らしい曲集だと思ってたのに。だって愛娘のシュウシュウのための曲ですよね。「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」は、つまらない練習曲に辟易しつつ頑張って「やったー、終わったよー!」だし、「象の子守歌」は、夜ベッドの中で女の子と象のぬいぐるみがおしゃべりしてるような可愛い曲ですよね? 「雪は踊っている」は、しんしんと降り続く雪を窓から眺めていて… まあ、この曲は途中で幻想怪奇が入り込んでくる感じはしますが、「ゴリウォーグのケークウォーク」だって、小さな黒人人形のひょうきんな顔とかぎくしゃくした動きが愉快な感じで。幸せな家族の情景が見えてくるような曲集かと思っていたのに。なんだかあと一歩入り込んでしまったみたい。

この「ドビュッシーピアノ集」は3なので、当然1と2もあるんですけど(下左2つ)、今年はサンソン・フランソワ没後40年だそうで、今度こんなボックスが出るんですね。「フランソワ/EMI録音全集」全36枚ですって。すごいなあ。私はそこまでのファンではないので、もしこのセットが手元にあったとしても全部聴ける自信はないんですけど(す、すみません)、サンソン・フランソワの弾くラヴェルのピアノ協奏曲ト長調は聴いてみたいな。だってものすごく似合いそうなんですもん♪(このボックスは2010年10月25日発売予定)
  

*関連記事*
「エチュード」フランソワ



2010年06月19日

「子供の領分」ミケランジェリ

Category : CD(ドビュッシー) | Comments (10)  

「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」が、レッスンのたびに撃沈してる今日この頃。そんな時にこのCDを聴くと、さらに打ちのめされます…。これはミケランジェリのもの。「前奏曲集」第1巻の12曲と「子供の領分」6曲が収められています。
ミケランジェリの演奏は、完璧を期するためか一般的な演奏よりもテンポが遅いことがたびたびあるし、私にとってはそれがネックのことも結構あるんですよね。演奏そのものは好きだし、それだけしか聴かなかったら問題ないんでしょうけど、他のピアニストの演奏だってどうしても聴くことになるし、そうなると自分なりの適正テンポのイメージがつくわけで… そこから大きく外れているとツライのです。
でもこの「子供の領分」に関しては、十分適正テンポ内の演奏。速すぎず遅すぎず… というか、速いところは羽のように軽やかに速く、遅いところはゆったりと遅く。…となると、音へのこだわりを持った人の演奏だけに、この透明感がドビュッシーにぴったり。音の粒がなんて美しく揃ってるんでしょう! ほんと、どうやったらこんな風に弾けるのかしら。打ちのめされると分かっていても、それでも聴いてしまう私です。

ドビュッシーはそれほど大好きというわけではないので、普段はあまり聴かないのですが、曲の題名がとても素敵。前奏曲集の1巻は「デルフィの舞姫たち」「帆」「野を渡る風」「音とかおりは夕暮れの空気に漂う」「アナカプリの丘」「雪の上の足跡」「西風の見たもの」「亜麻色の髪の乙女」「とだえたセレナード」「沈める寺」「パックの踊り」「ミンストレル」… 絵画的というか、物語が生まれそうな題名ばかりですね。実際、「デルフィの舞姫たち」はルーブル美術館にある古代ギリシャ時代のカリアティード(女像柱)がイメージの源だそうですし、「パックの踊り」は、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」にも登場する妖精パック。アーサー・ラッカムの描いた挿絵にヒントを得ているようです。「西風の見たもの」はアンデルセンだし、「沈める寺」はフランスのブルターニュ地方に残る、海の下に沈んだイスの町の伝説からできた曲。物語ではありませんが、「音とかおりは夕暮れの空気に漂う」はボードレールの詩「夕べの諧調」の一節からとられた題名。…というのは、青柳いづみこさんの本から得た知識ですが。あーでも、青柳さんはミケランジェリの弾くドビュッシーはあまりお好きではないんですよね、確か。

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アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(Arturo Benedetti Michelangeli 1920-1995)
  イタリアのピアニスト。
  1939年のジュネーヴ国際音楽コンクールで優勝、審査員長のアルフレッド・コルトーから
  「リストの再来」と賞賛される。
  レパートリーは、ベートーヴェン、シューマン、ショパン、ブラームス、ドビュッシーなど。
  ミスタッチの無い演奏を行う完璧主義者であり、そのためか演奏家としてはレパートリーが非常に狭い。
  演奏のためのコンディション作りにも拘り、コンサートのキャンセル魔としても有名。



2010年03月11日

「子供の領分」小原孝

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先週も今週もレッスンはなし。ということで、またしてもドビュッシーのCDの記事を。
「子供の領分」の入っているCDはいくつか手元にあるので、どれを取り上げてもいいんですが、ちょっと意表をついたところで(?)小原孝さんの「イヴェットのためのソナティネ」を。収められているのは、ギロック「ソナティネ」、プーランク「村の女たち」、サティ「官僚的ソナティネ」、アンリ「卵の中のジャズ」、ラヴェル「マ・メール・ロワ~四手のための」、ドビュッシー「子供の領分」、モンサルヴァーチェ「イヴェットのためのソナティネ」です。
小原孝さんの大ファンの方に「小原孝さんいいですよ!」と超強力大プッシュをされた時に買ったCD。既にかなり沢山のCDを出してらっしゃるので思いっきり迷いつつ、小原孝さんはギロック普及委員会だそうなのでそちらの方がいいのかなと思いつつ、でもギロックも何枚か出してらっしゃるので選びきれず。で、アレンジとかじゃなくて「まずはクラシックを」ということで、これを選んでみたんですが、これが当たりでした。まず選曲がイイ。子供のために書かれた小曲を集めたというだけあって、可愛い曲がいっぱい。特に好きなのはアンリの「卵の中のジャズ」。アンリというのは初耳だったんですが、パリのコンセルヴァトワール出身で、現在は国際ジャズ音楽院の院長を務めてる人なんだそうです。その名の通りジャズ系の全7曲なんですけど、特に最初の「スール・ジャック」と最後の「マッド・ロック」が最高。カッコいい! この曲を知ることができたのが一番の収穫だったかも。あとはプーランク「村の女たち」も、ちょっぴり初級の教本っぽい曲ではあるけど好きだし、サティの「官僚的ソナティネ」も、クレメンティのソナチネのパロディになってて可笑しいし。あ、肝心の「子供の領分」に関しても、とても優しくて綺麗で好きな演奏でした♪

ギロックに関してはこのCDもいいなと思ってたんですが、小原孝さんと作家の光原百合さんが今度「叙情小曲集」をテーマにしたCD絵本を出されるそうなので、やっぱりそちらにしようかと。本当は「ジャズスタイルピアノ曲集」が聴いてみたいんですけどねえ。「クラシックを学んでいる人が楽譜を見ながら弾いてジャズピアニストの気分を味わえる」なんて面白そう。
あと、小原孝さんといえば、国府弘子、島建、塩谷哲、山下洋輔、佐山雅弘さんたちと一緒にラヴェルの「ボレロ」やガーシュインの「ラプソディインブルー」の6連弾なんてのをしてますよね。このJAZZピアノ6連弾のシリーズをまとめてDVDにしてほしいな。というより、ああ、実物が観たかったわー。

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小原孝(1960- )
  日本のピアニスト。作曲家でもある。
  1986年、国立音楽大学大学院を首席で修了。クロイツァー記念賞を受賞。
  ピアノの独奏だけでなく、伴奏、作曲、編曲、作詞、執筆なども積極的に行っている。
  伴奏活動では、奏楽堂日本歌曲コンクール優秀共演者賞を3度受賞。(2002年・2005年・2006年)
  作曲では、2006年に第17回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門の中田喜直賞を受賞。



2010年03月07日

「子供の領分」ハイドシェック

Category : CD(ドビュッシー) | Comments (2)  

シューマンの「子供の情景」の時にも触れたハイドシェックのCD。「子供の領分」を練習することに決まってからいくつかCDを聴いて、その中にはとても好きなのもあったんだけど、どうもここに戻ってきてしまいます。「子供の領分」を最初に聴いたのがこのCDだったから(少なくとも意識して聴いたのはこのCDが最初)、これが基本形となってしまってるというのもあるんだけど、でもやっぱりこれはとても好き。
ドビュッシーだと誰の演奏が評判いいんだろう?と調べてみたら、まずアレクシス・ワイセンベルクやミシェル・ベロフの名前が出てたので、そちらも早速試聴してみたんですが… アレクシス・ワイセンベルクの演奏は、私の好みより速すぎ。例えば「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」は、確かにある程度速く弾きこなしてこその曲ではあるんだけど、それにしても飛ばしすぎて情緒まで飛んでいってしまったみたい。ミシェル・ベロフの演奏はとても綺麗なんだけど、切れが良すぎて、これも少しイメージと違う…。というのはまるっきり私の主観なので、好きな方には申し訳ないのですが… ドビュッシーの他の曲はともかくとして、この「子供の領分」はドビュッシーが愛娘のために書いた曲なんだし、切れのいい冴えわたった演奏というより、ある程度の柔らかさとか優しさが欲しいなって思うんですよねえ。
その点、このハイドシェックの演奏には年長者が小さな子供を見守るような暖かさがあって(このCDのジャケットもそんな感じだ!)すごく好き。1つ1つの音も美しくて深みがあるし、「円熟」という言葉がよく似合うような気がします。

でも、そこまで気に入ってるというのに、ハイドシェックのCDで聴いたことがあるのはこれだけ、というのはどういうことなんでしょう。特にベートーヴェンとモーツァルトに定評がある方ですよね。ハイドシェックのベートーヴェン、聴いてみたいです。でも私の中でベートーヴェンは、ケンプがすっかり基本になっちゃってるからなあ。どうだろうなあ。

*関連記事*
「子供の情景」ハイドシェック 



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