2011年11月05日

「音楽の正体」その3

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第5章「加山雄三に学ぶ感動の黄金率 -旋律の頂点とは何か-」

1960年代後半、「若大将」加山雄三が歌う曲は次々にヒットしたけれど、その中でも一番のヒットとなったのは、加山雄三自身の作曲による「君といつまでも」。これは、当時の加山雄三がとてもかっこ良かったとか、メロディがきれいだとか、歌詞が良いとか、そういう単純な理由でヒットしたのではなく、旋律の黄金のルールにきっちりとかなった、見事な構成になっているからなのだそう。

その「旋律の黄金ルール」というのは何なのか。まず、上にあがっていく旋律は明るさや興奮をもたらし、下にさがっていく旋律は暗さや沈鬱さをもたらすというのが1つ。そして次に1つの曲の中に小さな旋律の山がいくつもあり、その中で一番高い山の中の一番高い位置にある音符が「旋律の頂点」だというのが1つ。そこがその曲の中で一番盛り上がる場所で、そこに向かって歌い上げていくというわけです。
…というのはクラシックでも一緒ですね。スケールの練習をする時もそれを意識しながら弾くことになりますし、ピアノの先生にも以前「その曲の一番高い位置にある音符に向かって弾くことを意識して」と言われたことがあります。最初から張り切って全力を出してしまったら、本来のクライマックスでちゃんと盛り上がれないですものね。
ということで、この章は既に知っていることの復習の章でした。

第6章「風と共に去りぬの秘密 -跳躍的旋律のインパクト-」

10秒で人を感動させなければいけない、と言われる映画音楽。「風と共に去りぬ」のタラのテーマは、そのために必要なある1つのとても明解な特徴を持っているのだそうです。それは音程の幅。

2度や3度の間隔で細かく動いているうちは雰囲気作りをしている状態。そこからいきなり音程が跳ね上がるところが旋律の聴かせどころ。聴き手に大きな喜びをもたらすのだそうです。たとえて言えば、中小企業に就職してずっと鳴かず飛ばずだった若者がヤケクソで出した企画が大当たり、そこからとんとん拍子に出世、というような感じ。ですって。(笑) 大企業に就職して堅実に出世街道を歩んでいるエリートサラリーマンの姿とはまた一味違うわけですね。
モーツァルトの交響曲40番の出だしもこの効果なのだそうです。最初はミ♭とレの繰り返し。それがいきなり6度も跳んで、また静かに下降。この6度の跳躍で聴き手をドキッとさせて、その後の下降でまた気分を落ち着けるというわけです。こういう風に音程が跳ね上がるメロディを「跳躍的旋律」と呼び、跳躍の幅が広ければ広いほど高揚感が増すのだそう。

そして「風と共に去りぬ」のタラのテーマの冒頭はこの跳躍的旋律の繰り返し。1オクターブという8度跳躍がとても効果的に使われている良い例。「時代の激流に流されつつも力強く生きる主人公の人生への意思が、8度跳躍に込められているといえる」とありました。考えてみたら、確かに跳躍だけでできているような曲ですものね。例えてみれば、サビだけでできた曲のようなもの?(笑) 映画館で予告が流れるにしても、テレビのCMに流れるにしても、時間は本当に限られてますものね。10秒で人を感動させなければいけないというのも納得です。
でもそれを言ったら、CDの曲もそうなんだな… 小林亜星やキダ・タロー辺りもそういうテクニックを身につけてるに違いないです。特に「浪花のモーツァルト」キダ・タローの曲は、大阪のテレビのCMや番組ですごく沢山使われてます。「有馬兵衛向陽閣」とか「かに道楽」とか「551蓬莱」とか。一度聴いたら忘れないインパクト。(笑)

それ以外の跳躍的旋律を使った名曲は、中山美穂の「世界中の誰よりきっと」や谷村新司の「昴」、映画「雨にぬれても」、今井美樹「Miss You」、青い三角定規「太陽がくれた季節」、trf 「Boy Meets Girl」辺り。
特に「世界中の誰よりきっと」は8度跳躍するところに「世界中」というスケール感のある歌詞を当てはめてるワザありの曲なんですって。「昴」の楽譜を見てみると、8度跳躍してから一旦下って、しばらくしたらまた8度跳躍して、そこからさらに音程が上がっていってます。その辺りにもヒットした秘密がありそう。そして大体どれも8度跳躍で、自然な旋律としてはこの8度の跳躍がほぼ限界だそうなんですが、今井美樹のだけは9度跳躍。その9度跳躍部分で「I miss you」という歌詞を強調してるというわけですね。へええええ。

今度から曲の中に跳躍を見つけるたびに「おおー」とにんまりしてしまいそうです。



2011年11月05日

「音楽の正体」その2

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第3章「ユーミンのおこした革命(1) -導音省略のドミナント-」

曲というものが基本的に V → I で終わる以上、その V (ドミナント)が作曲家の個性を表すことになるのだそうです。どうやってドミナントへ行くのか? どんな風にドミナントを鳴らすのか?

ドミナントは作曲家の顔と言われるほど、作り手の個性が明解に出る場所なのだ。ベートーベンやブラームスのように重々しくがっしりとした曲作りをする作曲家は、ドミナントも重い。もったいをつけて鳴らされ、また鳴る時間も長く、音量も大きく、これでもかこれでもかと重量感が強調される。
また、ショパンの場合のドミナントはピアノの詩人と言われるだけあって、単なるソシレ(ハ長調の場合)がポーンと鳴るドミナントではない。たいてい何か修飾的な工夫がなされていて、そこにはやはりショパンらしい華麗さと哀感が込められているのだ。

そしてこれはポップスでも同じ。正面切ってドミナントが鳴らされるにせよ、そこに工夫が凝らされるにせよ、やっぱり作り手の個性が出るというわけですね。そしてユーミンの場合。

ユーミンの場合は、あまり本来の意味での V (ドミナント)が鳴らないのだそうです。そのほとんどが「 F オン G 」と呼ばれるもの。これはベースの音が「ソ」の音で、その上に「ファラド」の和音が乗っているという状態。
そしてこれは導音が省略されているということでもあるのですね。導音というのはドミナント和音の第3音。これは下から3番目の音という意味ではなくて、一番下の音から3度にあたる音ということ。3つ鳴らした時の真ん中の音。「ソシレ」の「シ」の音。元々和音の中の第3音というのは長調か短調かの性格付けをするのでとても重要で、省略できない音なのですが、その中でもドミナントの第3音は「導音」と呼ばれるとても大切な音なんですね。(ハ長調の場合)

「導音シが主音ドに上がる」
たったこれだけのことに含まれる単純だが深い味わいと限りない安心感・安定感。それが西洋音楽の正体そのものだと言ってもいいのである。

ユーミンが好む「 F オン G 」はベースが「ソ」で上が「ファラド」なので、導音の「シ」がない! それなのにそこから I の和音に行ってしまうのですね。これでは安定感が得られないのです。(変終止と同じ効果なのかな?)

では、実際にユーミンの曲はどうなのでしょう。
まず「 F オン G 」というのは、F と G の要素を半々に持っているのだそうです。ドミナント(妻)の G は、地味で堅実、安定感は抜群だけれど、少々野暮ったい面もある和音。それに対してサブドミナント(愛人)の F は、派手で軽くて、責任感のない晴れやかな和音。この2つをあわせ持つということは、日本古来の良妻賢母的な女性像ではなく、70年代後半辺りからの時代の気分に乗った、従来の主婦像にとどまらない軽やかな女性像を象徴するような和音だということだそうで… 実際、これがとても「透明感のある都会的な香りがする」響きなのだそうです。…なるほどねえ。ユーミンって確か70年代に出てきた人ですものね。時代に合っていたのですねえ。
そして導音がないということは、導音から主音にあがるという西洋音楽500年の歴史の重さや義務から解放されたということで、これまた大変な軽やかさがあるのだそうです。

第4章「ユーミンのおこした革命(2) -保続音のエクスタシー-」

そしてユーミンの起こしたもう1つの革命は、「卒業写真」のサビの部分で保続音を使ったこと。
保続音というのは、ベースが同じカクテルのようなものなんですね。同じウォッカベースでトマトジュースを混ぜればブラッディーマリー、オレンジジュースを混ぜればスクリュードライバー、ライムジュースとジンジャーエールを混ぜればモスコミュール…
保続音もこれと同じ構造で、ベースが同じだけれど上に乗せる和音が少しずつ違うというパターン。もしくはソプラノが同じだけど、下の和音が変化していくというパターン。有名なところでは、ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」や「太陽にほえろ」のテーマ。モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」も。

この保続音には、「緊張の持続した流れを作る」という効果があるのだそうです。和音は変わっていって変化はあるのに、1つの音にずっとひっぱられて、この先どうなるのだろうという緊張感が生まれて、それが終わってほっと一息をつくという流れになるのだとか。
確かに「ハイウェイ・スター」のあのイントロは、ものすごい緊張感! でもほっと一息つく間もなく曲の最後まで突っ走るって感じですね、あの曲は。ほっと一息つくのは曲が終わった後かしら。(笑) そして「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」は、左がドの音を連打するところ… ってこれは本に載ってた楽譜なんですけど…(笑) オーケストラだとこういう保続音を作りやすそうですね。保続音を作るパートがどんどん入れ替わっていって、そりゃもうすごい緊張感で盛り上がる!という曲だって作れそうです。(本当かしら? 笑)

そしてユーミンのすごいところは、この保続音を曲のイントロや間奏のアクセントで使うのではなく(それだけなら、ユーミン以前にも例があった)、「歌い上げ系のバラードでサビを支えるキモ」として使ったことなのだそうです。

バラードのゆったりしたリズムの中、最初は上に広がり、次は下に広がる、あの「卒業写真」のサビ独特のフワーッと夢見心地に広がるファンタジックな奥行き感は、こんなところに原因があるのである。

私はユーミンはほとんど分からないのですが、確かに独特の個性がありますよね。今までは時代に合った歌詞なんだろうな、とか、あの独特な声のせいもあるよね、とか思っていたんですけど、こんな風に色んな新しいワザが駆使されてたとはー。
ただ、作詞作曲がユーミンでも、実際に和音に乗せてるのもユーミンなのかしら? ご主人の松任谷正隆さんの手腕もあるのかもしれないですね。なんて思ったりもしたんですけど… 「卒業写真」は荒井由美時代の曲だそうだから、やっぱりご本人だったのかな。

いずれにせよ、ユーミンのように大スターとなる人には、やっぱり何か確固としたワケ(ワザ?)があるものなのですねえ。クラシックならまだしも、ポップスやロックの世界はきちんとした勉強をした人ばかりではないはず。きちんと勉強してる人の方が少ないのかも。前々からあるワザなら聴いたり演奏したりするうちに会得することもできますけど、新たなワザを生み出すのってやっぱりすごいことですよね。きちんと勉強してない方が規則に囚われずに済みそうな気もしますが、それでも西洋音楽の長い歴史を背景に持つ規則は、やっぱりそれだけの意味があることだろうと思うし… 和音の持つイメージとかそれぞれの音の持つ意味合いを本能的にきちんと感じ取っていて、なおかつその時代の空気にも敏感だということですものね。すごいなあ。



2011年11月04日

「音楽の正体」その1

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第1章「レット・イット・ビーは終わらない -変終止のつくるクサレ縁-」

前の記事からの続きです。
この章は主要3和音と終止についての話。主要3和音というのは、楽典的に書き表せば I (トニック)と IV (サブドミナント)と V (ドミナント)のこと。ハ長調でいえば、ドミソ(C)とファラド(F)とソシレ(G)ですね。極端な話、この3つさえあれば簡単な曲が1曲書けるぐらいの重要な和音です。
この本で面白いなと思ったのは、この3和音を「夫」「妻」「愛人」にたとえていること。まず I のトニックが夫。I をがっちり支える V が妻。安定感は抜群だけれど、少々野暮ったい面もあります。そして IV のサブドミナントが愛人。V と似た働きをするけれど、V に比べると安定感には欠ける存在。でも魅力的。
男は愛人とすったもんだしつつも、最後は妻の元へと帰ってハッピーエンド… こうしてみると、1つの曲がまるでドラマのように見えてくるというわけですね。

そして曲の終わり方として王道なのは、V から I の全終止。妻から夫へのアプローチ。とても平和で心安らかな気分になれる終わり方。そうでなければ、 IV から I への変終止。愛人から男へのアプローチ。これはあまり終わった感じがしなくて、後を引く終わり方。

かつて大ヒットしたビートルズの「レット・イット・ビー」は、途中盛り上げるだけ盛り上げておいて、最後は変終止でさっと逃げているのだそうです。「1番が終わるとどうしても2番が聴きたくなり、2番が終わると3番、3番が終わるとまた最初から聴きたくなる、という仕掛け」… 変終止ってそういう風に使うんですね! クラシックの曲ならまだしも、ミリオンセラーのヒットを狙うには、全終止で完全に満足させちゃうような曲よりも、変終止で後を引かせた方が勝ちだということなんですね。面白いなあ。同じくビートルズの「イエスタデイ」とかエルトン・ジョンの「ユア・ソング」もそういった変終止の曲なんだそうです。

第2章「ブルースも終わらない -禁則進行のレジスタンス-」

この章はコード進行の話。音楽理論的には、基本的な和音進行というのは既に厳密に決められていて、それほど自由に行ったり来たりすることができるというわけではありません。たとえばこんな感じ。

  ・I は何にでも進める
  ・II は V にしか進めない
  ・IV は VI 以外何にでも進める
  ・V はI と VI にしか進めない
  ・VI は I 以外何にでも進める

これはクラシックでの決まりごとですが、ポピュラー音楽でもこの規則が大前提。動き方が決まってるところは、まるで将棋の駒のようだとありましたが、まさにそうですね。こんな風にきっちり決まってると、どの曲も同じような感じになりかねないわけです。でも天才的なヒットメーカーとなっている人たちは、そういった基本的な和音進行の曲をベースにしながらも、その中で必ずどこかに自分なりの工夫をしているのだそう。

そしてこの章の本題であるブルース。一般的なブルース進行というのはこんな感じ。

  C→C(F)→C→C→F→F→C→C→G→F→C→C(G)

規則から言えば、G(V)からは C(I)か Am(VI)にしかいけないはずなんですが、ブルースは必ず「G→F→C」で終わります。これはクラシックではまず見かけることのない、調和や安定とは程遠い進行。でもそれがブルースの性格にとても良く合っているのですね。考えてみれば、ブルースというのは元々アメリカ南部のアフリカ系アメリカ人の間から発生した音楽ですものね。黒人霊歌とか労働歌などから発展したものが、明るく満ち足りているはずがないわけで。

クラシックでは禁じられた V 度→ IV 度進行で刺激を作り、しかもそれを変終止で I 度に戻す。ブルースがやみつきになる理由はここにあるのだ。強烈な刺激と最終的な不満足感、一種の病的な哀しみをブルースが表現できるわけである。

これにはほんと「なるほどなあ」と納得です。私、ブルースギターが大好きなんですよー。でね、いわゆるブルースと分類される曲ではなくても、ものすごく惹かれる流れというのがあるんですが、それってもしかしたらブルース的なコード進行だったのかもしれないなあと思いました…。ちなみに「レット・イット・ビー」や、映画バットマンのテーマ、フィンガー5の「学園天国」にもブルース的なコード進行が含まれているのだそうです。
そしてブルースも変終止。だからライブで1つの曲が延々と演奏され続けたりするんですって。



2011年11月04日

「音楽の正体」

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「音楽の正体」という本を教えてもらったので早速図書館で借りてみました。
これは以前フジテレビで1993年10月から6ヶ月間深夜に放送された同名の番組をベースにした本とのこと。筆者の渡邊健一さんがその番組の企画と台本を担当していたのだそうです。私はその番組は観てないのですが、かなりいい番組だったようですね。その番組は今でもYou Tubeでも観られるようなんですが、まずは本を読んでみると、これがとても勉強になる本で! 例に出されてる曲はポップスやロックが多いのですが、渡邊健一さんが桐朋学園高校の音楽科作曲専攻を経て慶応大学に入るという経歴の持ち主のためか、楽典的にかなり踏み込んだ内容となっており、しかも専門外の人間にもものすごく分かりやすいです。amazonのレビューに「ミュージシャン養成学校等で教科書にも使われていた程の伝説の隠れたベストセラー」とあって納得してしまったほど。まだ全部読み終えてないのですが、読み進めるほどに発見があるので、これは少しずつ記事にしてまとめていってみたいと思います。
(ちなみにこの本は現在入手不能状態… 復刊して欲しい!)

そうか、あの曲にはこんなワザが隠されていたのかー!とか、大学でクラシックの作曲技法を学んだ人ならともかく、ポップス・ロック系の作曲をする人も実はこういうワザをちゃんと知ってたのねー!とか、基本をきちんと知ってるからこそこうやって外すワザが使えるのねー!とか。そりゃあもう色々な発見が~。

あ、でも、まとめるのは次の記事からということで、この記事ではとりあえず本の目次を書いておきます。

  第1章 レット・イット・ビーは終わらない -変終止のつくるクサレ縁-
  第2章 ブルースも終わらない -禁則進行のレジスタンス-
  第3章 ユーミンのおこした革命(1) -導音省略のドミナント-
  第4章 ユーミンのおこした革命(2) -保続音のエクスタシー-
  第5章 加山雄三に学ぶ感動の黄金率 -旋律の頂点とは何か-
  第6章 風と共に去りぬの秘密 -跳躍的旋律のインパクト-
  第7章 モンキーズの見た白昼夢ーデイドリーム・ビリーバー -ドッペルドミナントの魔法-
  第8章 赤いスイートピーはどこへ行ったのか -副5度によるシーン展開-
  第9章 津軽海峡イオン景色 -音楽の「泣き」とは何か-
  第10章 クラプトンのギターが優しく泣く間に -非和声音の麻薬的常用-
  第11章 坂本九・オサリバン・ミスチルの旅したパラレルワールド -胸キュン準固有和音の構造学-
  第12章 シカゴのブラス音が雑踏に消える時 -音画的手法とは何か-
  第13章 フランス革命なんて勝手にシンドバッド -絶対音楽とは何か-
  第14章 結婚しようよは最後に言って -黄金のカデンツ-
  第15章 プリンセスプリンセスの見つけたダイアモンド -転回形と半音階的進行-
  第16章 竹内まりやの「告白」に鼓動を聞く -内声と外声-
  第17章 パリの空の下、シャンソンは流れる -複合拍子の構造学-
  第18章 坂本龍一の中の寅さん -日本音楽の彷徨-
  第19章 ヘップバーンとユーミン -楽曲形式論-
  第20章 なぜ年の瀬には第九が聴きたくなるのか -変奏曲形式とジャズ-
  終章  セーラー服でたどる音楽史 -平均律という遺伝子-



2010年10月19日

和声の進行

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今回は和声について。今、イタリア協奏曲の分析を進めてるところなんですが、どうしてもよく分からない部分が出てきてしまって難航中。まだほんの入り口しか勉強してないので仕方ないんですけどね。知識不足を埋めるには、勉強を先に進めるしかありませんー。でも、既に本で読んでる部分でも、実際に当てはめようとすると分からない部分が出てくるし…。これまではI度和音とかV度和音といった和音記号を考えてたんですけど、その前にコードを取ってみようかなと考え中。和音記号は調性によって変化してしまう「移動ド」ですが、コードなら転調に左右されることのない「固定ド」ですしね。そこからやっていった方が、もしかしたら分かりやすくなるかも?
第1楽章の和声が全部分析できたら、一度先生に見ていただこうと思ってます。次のレッスンまでに仕上げるのが一応の目標。

*****

 
和声…harmony (英)
   メロディ、リズムと共に音楽の3要素のひとつ。
   調性音楽では、T、S、D の機能進行の組み合わせが楽曲を形成する。

T、S、D の機能進行
 第1型 T → D → T
  I(T)→ V(D)→ I(T)・VI(T)
  I(T)→ VI(T)→ V(D)→I(T)・VI(T)

 第2型 T → S → D → T
  I(T)→IV(S)→V(D)→I(T)・VI(T)
  I(T)→IV(S)→II(S)→V(D)→I(T)・VI(T)
  I(T)→II(S)→V(D)→I(T)・VI(T)
  I(T)→VI(T)→II(S)→V(D)→I(T)・VI(T)

 第3型 T → S → T
  I(T)→IV(S)→I(T)
  I(T)→VI(T)→IV(S)→I(T)

 T は S にも D にも進むことができる。
 D は T にしか進むことができないが、S は D にも T にも進むことができる。

和音記号ごとの基本的な進行と制約
 I … すべての三和音と II7、V7、V9 に進むことができる。
 II … V(7・9)にのみ進む。
   ただし「 II → I の第2転回形→ V」の進行は認められる。
   (「 I の第2転回形→ V」が1個のD和音として用いられるため?)
 III … 特殊なので省略。
 IV … I 、II(7)、V(7・9)に進むことができる。
 V … I もしくはVI(T)に進む。
 VI … T の場合は、I を除くすべての三和音と、II7、V7、V9 に進むことができる。
    S の場合は、I に進む。
 VII … I か VI(T)進む。(V7の代わりに使用されることがある)

 VI → I 、V → IV、IV → VI などの進行は禁止されている。

カデンツ(終止形)
 完全終止…D-T に V-I の和音の基本形をあて、旋律が主音で終わる終止法。
      完全な終止感を得られる。
      古典的な楽曲の最後や、大きな段落の終わりに用いられる。
 不完全終止法…D-T に V-I の和音の転回形をあてた進行。
        V-I の基本形の場合は、旋律が主音で終わらない。
        完全な終止感は得られず、継続感が残る。
 偽終止…D-T に V-VI の和音をあてた進行。
     V から I への期待を裏切って VI に進むため、不満が残る。
     本来なら終わりとなる箇所でさらに曲を続けたい場合に用いる。
 変格終止…完全終止で曲が終わった後に、つけたしのように IV-I を用いる。
      讃美歌の最後の「アーメン」に使われるため、「アーメン終止」ともいう。
 半終止…曲の途中のVで終止する形。
     終止感は全くなく、上記のカデンツの中で最も不安定。
     V の代わりに V7 を使うことはできない。

*****

 
和音を混声四部合唱(ソプラノ・アルト・テノール・バス)による構成と見なしたり、その各声部の音域や間隔についての約束事、禁則などについても本にあるんですが、これはポリフォニーを勉強する時にまわそうと思います。とりあえずは必要ないと思うので… 作曲するわけではないですしね。

*****

 
非和声音…和音に含まれない音。
     ほとんどの旋律は和声をもとにして生まれるが
     より豊かな響き、緊張感のある響きのために、非和声音も織り交ぜて用いられる。

主に弱拍にあらわれる非和声音

 経過音…passing note(英)
     2つの和声音の間を音階的に繋ぎ合わせる非和声音。
 刺繍音…broderie(仏)
     2つの同じ高さの和声音に挟まれた隣接の非和声音。
     下側の刺繍音は臨時記号で半音高めることが多いが
     上側の刺繍音は半音変化を行わない。
     補助音ともいう。
 逸音…échappée(仏)
    刺繍音の後の方の和声音が省かれて、隣接の非和声音で終わる場合。
 先取音…anticipation(英・仏)
     逸音が次の和音の中でもう一度打ち直されて解決する場合。

主に強拍に現れる非和声音

 倚音…appoggiatura(伊)「いおん」
    刺繍音の最初の和声音が省かれて、隣接音から始まる場合。
    2度上行、または下行して解決する。
 掛留音…suspension(仏・英)
     前の和声音の一部がタイで次の和音の中に残った場合。
     一旦不協和になり、解決する。

その他
 保続音…orgelpunkt(独)
     オルガンのペダルで奏される持続音。
     和声変化にかかわりなく、動かずに奏される同音度のバスの音。
     最初は和声音だが、非和声音となり、再び和声音となる。
     保続音の上に形成される和音はV7が最も多いが
     IIやその他の和音も用いられる

*****

 
非和声音の訳が英語だったりフランス語だったりイタリア語だったりと一定しないですが、それぞれの国の音楽で現れた特徴ということなのかな? と思ったら、掛留音のところで「18世紀フランスのクラヴサン音楽でよく使用された」とありました。やっぱりそういうのが関係あるんですねー!

次回は転調についてやろうと思います。



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